蓮實重彦ファン待望の小説第三作目『伯爵夫人』を読みました。
1986年の『陥没地帯』はハスミ節炸裂でした。
1994年『オペラ・オペラシオネル』は読後「はぁ~?」でした。
2016年、第29回「三島由紀夫賞」受賞の本作はどうなのでしょう?
まず、装幀がうれしいです。
黒地に伝説の女優ルイーズ・ブルックスの横顔が浮き出ています。
そして帯は赤地。「伯爵夫人」とタイトルが黒字で横書きになっています。帯の最下段には銀色で第29回「三島由紀夫賞」の文字。右端に縦書きで「エロス×戦争×サスペンス 世界の均衡を揺るがす文学的事件!」とやや大げさなコピーが印刷されています。
次に、この本には、まえがきもあとがきも目次すらありません。
そしてなぜか199ページで終わっています。
さて、内容ですが(以下ネタバレ注意)、これは、堂々たるポルノ小説です!
主人公二朗は旧制高校(一高?)生。子爵の家柄。一方ヒロインの伯爵夫人は二朗の自宅の建て増しされた南向きの広い洋間にいつごろからか居候しています。
ある冬のたそがれ時、活動写真をを観終わった二朗は偶然、伯爵夫人と出会います。
それから、二朗と伯爵夫人の一夜のアバンチュール?が始まるのです。
この物語そのものはすべてウソくさいのですが、作者の描写力がこの小説を「触覚芸術」というほかないようなところまで高めています。
それにしても二朗のその後(物語のつづき)が気になります。