2年ぶりのイーストウッド監督の新作です。
前作2014年『アメリカン・スナイパー』もそうでしたが、苦悩する英雄が本作の主人公です。
2009年1月15日に実際に起きたUSエアウェイズ1549便のニューヨークを流れるハドソン川不時着水事故およびその後の実話を忠実に再現した物語です。
以下ネタバレ注意!
「ハドソン川の奇跡」を成し遂げた英雄、チェスリー・サリー・サレンバーガー機長のその後の物語です。
わたしは知らなかったのですが、その直後にサレンバーガー機長は国家運輸安全委員会により不時着水は乗客を命の危険にさらす無謀な判断ではなかったのか?という追及がなされ、賞賛から一転して容疑者となり、「無罪」を勝ち取るまでの法廷劇と言えるものです。
主人公のトム・ハンクスは1995年のロン・ハワード作品『アポロ13』で宇宙船の船長を演じていました。『アポロ13』では宇宙空間での事故発生から地球へ無事生還するまでの物語でした。『アポロ13』と同様に通常の映画作りからすれば、155名の乗員・乗客が「不時着水」という無謀な操縦(?)でいかに無事に全員生還できたのか? という流れで、ストーリーが展開し最後はハッピーエンドになり、観客は高揚した気分のまま映画館を出ることになるのですが、イーストウッドの作品ではそうは問屋がおろしません。
とにかく映画の中でトム・ハンクスの表情は苦悩に満ちています。ほとんど笑うことがありません。PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされ、なかなか眠れません。最後の国家運輸安全委員会の公聴会のシーンで無実が証明され、副操縦士のジョークで初めて笑顔をみせるのです。
ということは、この映画は主人公のサリー機長が、不時着水後の様々な苦悩から解放され笑顔になるまでの物語と言えそうです。
なかでも私のお気に入りのシーンは、ハドソン川に無事着水し乗客が全員救命ボートに乗り移ったのを慎重に確認した後、コックピットに入り制服のジャケットとフライトプラン(?)のボードを取って、最後にボートに乗り移るシーンです。サリー機長の真にプロフェッショナルな行動に感銘を受けました。
さて、このサリー機長、トム・ハンクスそしてイーストウッド監督とともに祝杯をあげるのなら、
精緻なブラン・ド・ブランを造ることで定評のあるドワイヤールの2007年ブラン・ド・ブラン・グラン・クリュ(詳しくは→コチラ)を飲みたいものです。
ではでは。