美酒礼賛

美酒礼賛 第21回2017年12月30日(土)

 
Malberg-Hochrain-GV
 
 

 第21回はオーストリアの独自品種グリューナー・ヴェルトリーナです。
 オーストリア随一の銘醸地ヴァッハウからの1本です。
 
 

 2013 ホーホライン・グリューナ・ヴェルトリーナー(ファイダー=マルベルク)
 生産地:オーストリア,ニーダーエステライヒ州ヴァッハウ
 生産者:ファイダー=マルベルク
 品 種:グリューナー・ヴェルトリーナー100%
 

 まずは、生産者のファイダー=マルベルクの説明から。
 ナパ・ヴァレーを振り出しにトスカーナ、スイス、ドイツ、ニュージーランドなどで研鑽を積み、2008年独立。ヴァッハウに醸造所を設立。
 ヴァッハウでは不可能と言われていた有機農法を実践し、貴腐果を使用せず、硬質ではありますが、上品でエレガンスに満ちたワインを造り上げています。
 
 

 では、早速抜栓してみましょう。
 直後は、グレープフルーツなどの柑橘系のアロマが支配的。数分後にはマンゴーやピーチなどの熟した甘いフルーツの香りが徐々にわき上がってきます。一口含むと、キリッとした酸をまず感じるのですが、すぐにまろやかな果実の旨味を感じ、フルボディでしかも余韻も長くつづきます。
 

 温暖化の影響でしょうか。近年のヴァッハウのワインは、アルコール度数が高くオイリーで、ニューワールド産リースリングのような少しもたついた印象のものが多いように感じられます。そんな中でこのファイダー=マルベルクのワインは貴重で、かけがえのない個性を有しています。
 
 

 傑出したオーストリアの白です。
 
 

 参考価格:6,500円(税別)

美酒礼賛 第20回2017年11月25日(土)

 
KOBE-Benediction-Blanc
 
 

第20回は日本ワインの白です。第3回では城戸ワイナリーを、第9回ではボーペイサージュを取り上げました。今回は神戸ワイナリーです。
 
 

 ここで神戸ワイナリーの歴史をおさらいしておきましょう。1979年に「一般財団法人神戸みのりの公社」として設立され、ファーストヴィンテージは1983年。以来30年以上にわたって営々とワインを造り続けている、老舗の国産ワイナリーです。ただその道のりは決して平坦なものではありませんでした。2008年には300万本もの不良在庫を抱え、製造元の「神戸みのりの公社」に対し、スポンサーの神戸市がXX億円の追加出資を行って救済したこともありました。また阪神間のワインファンからは「コープ(生協)さんで大量に売っているあのイマイチなワインね」とあまり評判は良くありません。
 
 

 ところが、神戸ワインは変わりつつあるのです!
 
 

 その代表選手が今回取り上げる「ベネディクシオン・ブラン」なのです。
 

 2016 ベネディクシオン・ブラン(神戸ワイナリー)
 生産地:日本,兵庫県神戸市
 生産者:神戸ワイナリー
 品 種:シャルドネ100%
 
 

 このベネディクシオンのシリーズは、現在北海道函館市の「農楽蔵(のらくら)ワイナリー」で醸造を担当されている佐々木佳津子(ささき・かずこ)さんが2008年にフランス帰国後から神戸ワイナリーで着手された新プロジェクトです。2010年に赤と白を初リリースし、その2008年産ルージュは「2010年国産ワインコンクール」で銅賞を、2009年産ブランは「2010年ジャパン・ワイン・チャレンジ」で銅賞をそれぞれ獲得しました。佐々木さん自身は2012年には神戸ワイナリーを離れましたが、その後もベネディクシオンは粛々とと造られており、この2016年産のブランは「2017年ジャパン・ワイン・チャレンジ」で金賞を受賞しているのです。
 
 

 それではグラスに注いでみましょう。
 色は透明感のある淡い黄色。グレープフルーツ、洋ナシなどのアロマを感じ、つづいてミントのニュアンスも。口に含むと爽やかな柑橘系の味わいとともにほど良いコクもあり、フィニッシュには心地よい苦みが残ります。ちょっと若いですが、あと半年ほどの瓶熟成で木樽の風味が溶け込み、より美味しくなることでしょう。
 

 このベネディクシオンは傑出したシャルドネとは言えませんが、なかなかどうしてイケてます。同じ価格帯のブルゴーニュ・ブラン(たとえばジャド社など)と比較しても決して見劣りしません。

 
 

 ベネディクシオンとはフランス語で「天の恵み」という意味です。神戸市北区と西区にあるブドウ畑の「天の恵み」をこれから神戸ワイナリーはどう生かしていくのか。
 「神戸ワインの進化」が楽しみです。

 
 

 参考価格:2,667円(税別)

美酒礼賛 第19回2017年10月17日(火)

 
Benoit-Lahaye-Brut-Nature
 
 

 第19回は泡物です。自然派シャンパーニュの東の横綱がジャック・セロスだとすると、西の横綱はブノワ・ライエかも。今回は、そんなブノワ・ライエの入門シャンパーニュのご紹介です。
 
 

 NV ブリュット・ナチュール・グラン・クリュ(ブノワ・ライエ)
 生産地:フランス,シャンパーニュ地方シャンパーニュAOC
 生産者:ブノワ・ライエ
 品 種:ピノ・ノワール90%,シャルドネ10%
 
 

 まずは、ブノワ・ライエの説明から。
 モンターニュ・ド・ランスの特級畑ブジー村および近隣の村にブドウ畑を計4.5haほど所有する小さなレコルタン・マニピュラン(自社畑のみからシャンパーニュを造る生産者)です。1996年シャンパーニュの元詰を開始。2007年にはエコセールより有機栽培の認証を取得。2009年にはビオディナミに転換。2002年に醸造家エルヴェ・ジュスタンと出会い、それ以降ジェスタンとの交流の中(コンサルタント契約は結んでいない)でライエのシャンパーニュは劇的に進化しつつあります。
 
 

 では、早速抜栓してみましょう。
 色調がいいんです。ほんのりピンクがかった淡い黄色です。おそらくピノ・ノワールの色素が少しでているのでしょう。香りは熟したリンゴやナシにほんのりライムのニュアンスも。一口含むと、濃厚な果実味とのびやかな酸とのバランスが素晴らしいです。濃厚でありながら、決して重くはなく、フィニッシュには洋ナシの風味が残り、キリッとした酸でしめくくります。
 
 

 3年前にもこのブリュット・ナチュールを試していました。そのときも純粋で自然な果実味が美しく表現されていることに驚かされました。しかし残念ながら今回のものとは酸の質が異なるのか、味わいに少しメリハリを欠いていて、飲んでいてピンとくるものがありませんでした。ですが、今回のものはデキが違のです! すでにモンターニュ・ド・ランス最良のレコルタン・マニピュラン(自社畑のみで造るシャンパーニュの小規模生産者)のひとりと評価を得ているブノワ・ライエですが、この3年間で彼はさらに進化したのです。

 
 

 参考価格:7,400円(税別)

美酒礼賛 第18回2017年9月17日(日)

 
Melting-Potes
 
 

 第18回はちょっと不思議なフランス産ヴァン・ド・ターブル(=テーブルワイン)です。
 ですが、ただのお手軽ヴァン・ド・ターブルではありません!
 
 

  2016 メルティング・ポーツ(ル・ヴァンダンジュール・マスケ)
 生産地:フランス,ヴァン・ド・フランス
 生産者:ル・ヴァンダンジュール・マスケ(アリス・エ・オリヴィエ・ド・ムール)
 品 種:ヴィオニエ48%,クレレット28%,グルナッシュ・ブラン24%
 
 

 まずは、生産者のル・ヴァンダンジュール・マスケの説明から。
 ル・ヴァンダンジュール・マスケとは、シャブリの自然派ドメーヌ、アリス・エ・オリヴィエ・ド・ムールのネゴシアン(ブドウを外部から購入してワインを生産)の名称です。
 実は2016年は霜と雹に襲われ、ムール夫妻はたったの500リットルしか収穫できず、わずか600本分のみの生産量だったのです。これでは経営が立ち行きません! そのため、長年の友人たちから異なる品種のブドウを譲り受け、このワインを醸造したのです。それでも生産量はわずか7,500本。希少な白です。

 
 

 では、早速抜栓してみましょう。
 マンゴーやピーチそしてヴィオニエ種の特長であるアプリコットの上品なアロマ。一口含むと、ソフトな口当り、分厚い果実の旨味を感じ、きっちりと筋の通った酸が永井余韻を約束してくれます。
 ムール夫妻の造る定番のシャブリとはまた違った、ローヌ系品種を使用したおおらかで美味しい白ワインです。
 

 ところで、このワインのみょうちきりんな名前の由来ですが、”melting pot” 英語で「人種のるつぼ」、つまり出生地の異なる多様な人々が同じ場所に混ぜこぜにあることを意味しています。これは異なる場所の畑から、それぞれ異なるブドウ品種をもって、同じ場所(ムール夫妻のセラー)で醸造していることと対応しています。また、melting potをフランス語的に文字遊びすると、pot≒potesはフランス語で友人たち(複数形)を意味するので、友人たちの混ぜ合わせというような意味合いも含んでいるのです。
 
 

 参考価格:3,300円(税別)

 

 

美酒礼賛 第17回2017年6月21日(水)

 
Turgy-RS
 
 
 第17回は泡物です。シャンパーニュの中でもとりわけプレステージ性の高いシャルドネ100%で造られた「ブラン・ド・ブラン」を取り上げたいと思います。
 
 

 NV ブリュット・ブラン・ド・ブラン・レゼルヴ・セレクション(ミシェル・チュルジー)
 生産地:フランス,シャンパーニュAOC
 生産者:ミシェル・チュルジー
 品 種:シャルドネ100%
 
 

 まずは、生産者のチュルジーの説明から。
 コート・デ・ブランで最上といわれるル・メニル・シュール・オジェ村にて1881年創業。ブラン・ド・ブランの老舗レコルタン・マニピュラン(自社畑のブドウのみを原料に使用する生産者)です。また畑はリュット・レゾネ(減農薬)で栽培されています。あの最上級ブラン・ド・ブランを産出している「サロン」もこの村に本拠を置いています。
 すぐれたシャンパーニュは,ヴァン・ド・レゼルヴ(地下のカーヴで保管されている熟成ワイン)とブレンドすることによって生み出されます。チュルジーではカーヴに少なくとも20年分のヴァン・ド・レゼルヴがストックされており,それらを絶妙にブレンドすることにより,特級畑ル・メニル・シュール・オジェのテロワールを表現しています。
 
 

 では、早速抜栓してみましょう。
 抜栓して間もなくはグレープフルーツのような爽やかな柑橘系のアロマを感じ、しばらくしてマンゴーやオレンジのようなより甘みの強い香りに変化していきます。味わいは、まずキュッとひきしまった酸味を感じ、次に濃厚なシャルドネの果実味が口いっぱいにひろがります。そして余韻にはマンゴーの風味が長く残ります。旨みの強い、美味しいブラン・ド・ブランです。
 
 

 さて、ル・メニル・シュール・オジェ産シャンパーニュといえば、何といっても「サロン」が有名です。生産量は5万本以上,価格は80,000円(2006ヴィンテージ)。 ちなみにこのチュルジーは6,000円です。
 1/10以下の価格でブラン・ド・ブランの宝石、特級畑ル・メニル・シュール・オジェの味わいを堪能できます!

 
 

 参考価格:6,000円(税別)
 
 
 ご用命は→コチラまで。

美酒礼賛 第16回2017年2月4日(土)

 
車坂
 
 
 

 第16回の「美酒礼賛」は、第5回以来の久方ぶりの日本酒です。
 
 

 正月早々興奮する出会いがありました。ワインの生産者でも滅多にないことなのにもかかわらず。
 長文ですが、最後までおつきあいください。
 
 

 26BY産 車坂 五百万石 山廃純米酒
 生産地:日本,和歌山県岩出市
 生産者:株式会社吉村秀雄商店
 品 種:五百万石100%
 

※26BY:BYとは醸造年度の略で平成26年度に造られた酒を意味します。
     酒造りはその年の秋から翌年の春にかけておこなわれるので、
     正確には平成26年~27年に造られています。
 
 

 燗酒ファンの私がこの寒い季節に超おすすめしたい日本酒です。

 
 

 この酒を一言で表現するなら「出鱈目なほど素敵な酒」といえるでしょう。
 
 

 まずこの酒は、ぬる燗(30~40℃、沸騰したおやかんに20~30秒程度徳利をつける)で味わうのが基本です。2年間酒蔵地下の保管庫(セラー!)で熟成されただけあって、色は黄みがかっています。香りは山廃仕込み独特のマディラ香。味わいは、酸が高く辛さを感じるのですが、山廃仕込みならではの濃醇でナッティなフレーバーが口の中で大きくふくらみます。そしてアフターには心地よい苦みがほんのり残るのです。まさに野趣あふれる男酒!
 

 実はある方の紹介で今年(平成29年)1月4日に蔵元に見学に行かせていただきました。
 その際、紹介されたのが藤田晶子杜氏です。彼女のまっすぐな眼差しに私は心を打たれました。こんなひたむきな眼差しを持った人に出会ったのは10数年ぶりでした。この人の造る酒なら間違いない、と直感しました。
 

 藤田氏は能登杜氏四天王の一人である農口尚彦杜氏の愛弟子で、25BYから吉村秀雄商店で活躍されています。当時石川県加賀市の「常きげん」で杜氏をされていた農口杜氏の下で10年間修行され、そしてこの「車坂」を任されたのです。かつては女人禁制であった酒造りの世界に身を投じた藤田杜氏の労苦は想像に難くありません。
 

 就任2年目にして山廃仕込みという熟練の技が必要な酒に果敢にチャレンジし、そうして2年間瓶熟成した後、満を持して出荷が始まりました。かつて師匠である農口杜氏が醸した加賀の銘酒「菊姫 山廃純米」と飲み比べてみたいものです。
 
 

 この妥協を知らない「車坂」には飲み手の感情をゆさぶる何かがあります。
 
 

 ところで、お値段は、720mlで1,350円、1.8Lで2,700円(税別)です。
 
 

 安すぎます!!!

 
 

 なお、「車坂」というブランドの由来はコチラです。
 
 

 蛇足ですが、太田和彦著『シネマ大吟醸』にならって、この酒を日本映画に合わせるなら、小津安二郎の1949年作品で日本映画史上不朽の名作『晩春』といいたいところですが、ここはあえて、黒沢清の1985年作品で意味不明な快作『ドレミファ娘の血は騒ぐ』でいきたいと思います。

美酒礼賛 第15回2016年9月24日(土)

 
barraud-sv-les-pommards
 
 

 第15回はブルゴーニュの白です。第1回ではACブルゴーニュ・ブランを第8回ではACコルトン・シャルルマーニュを取り上げました。AOCの格付けからいって最もお手頃のものからブルゴーニュ(というより世界の)白ワインを代表する特級畑までという両極端のセレクションでしたが、今回はちょっとお手頃な白ワインを取り上げます。
 
 

 シャルドネについて、いまさら説明は不要だと思いますが、ちょっとおさらいを。
 ブルゴーニュ原産の白ブドウ品種で、世界中のワイン産地で栽培されています。樽醗酵、樽熟成によくなじみ、古今東西の白の銘酒はほとんどがシャルドネです。シャンパーニュにも用いられ、シャルドネ単一で醸されるものは「ブラン・ド・ブラン」と呼ばれ、高級シャンパーニュの代名詞的存在です。
 
 

 さて、今回取り上げるワインは、
 

 2014 サン・ヴェラン・レ・ポマール(ダニエル・バロー)
 生産地:フランス,ブルゴーニュ地方サン・ヴェランAOC
 生産者:ダニエル・バロー
 品 種:シャルドネ100%

 

 1890年頃にこの地に来たバロー家は現在で4代目。現当主のダニエル・バローは、ブルゴーニュ南部マコネ地区を代表する生産者です。
 ACサン・ヴェランはブルゴーニュ南部マコネー地区の南にある8ヶ村で産する辛口白ワインの総称。フルーティーで軽やかなワインが多いなか,このバローのものは別格のコクと旨味を持っています。そんなバローの所有する畑の中でもこの「レ・ポマール」は信じがたい品質を維持しています。

 
 
 

 抜栓してみると、グレープフルーツやピーチのアロマを感じ、そしてバニラの風味が心地よくつづきます。一口含むと、口当りはソフトで、典型的なシャルドネのボリュームを感じ、それが長くつづきます。たいへん伸びやかなワインです。濃厚でありながらも、やさしい味わいです。余韻も驚くほど長く、最後に鉱物的なニュアンスが残ります。
 標準的なムルソーなどこのサン・ヴェランの前では、沈黙するしかないでしょう!
 
 

 ダニエル・バローのワインは1996ヴィンテージ頃から飲んでいますが、かわらず高品質なシャルドネを造り続けておられるのが、栄枯盛衰のはげしいブルゴーニュにおいてうれしい限りです。
 
 

 ブルゴーニュの白の有名アペラシオン、ムルソー、ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェなどの近年の価格の高騰ぶりには辟易としていますが、サン・ヴェランというコート・ドール(黄金の丘)地域ではない、お手頃価格なアペラシオンでACムルソーなどぶっ飛んでしまうようなワインがあることにブルゴーニュの良心を感じます。

 
 

 参考価格:4,600円(税別)

 
 

 ご用命は→コチラまで。

美酒礼賛 第14回2016年5月19日(木)

 
Sansonnier-La-Lune-A
 
 

 第14回は、ひさしぶりにロワールの白です。第10回ではミュスカデを取り上げましたが、今回はアンジュー地区のシュナン・ブランです。
 シュナン・ブランという白ブドウ品種は、世界中で栽培されています。特に南アフリカではフランスの3倍以上の作付け面積を持ち、お手頃なやや辛口のテーブルワインとして大人気となっています。本家のロワールでは、辛口のスパークリングから極甘口のデザートワインまで多様なワインが造られています。
 
 

 2013年 VdF ラ・リュンヌ アンフォール
 生産地:フランス,ロワール川流域アンジュー地区ヴァン・ド・フランス
 生産者:ラ・フェルム・ド・ラ・サンソニエール(マルク・アンジェリ)
 品 種:シュナン・ブラン100%
 
 

 当主のマルク・アンジェリは、ロワール自然派のリーダー的存在です。
 1990年ファースト・ヴィンテージ。ブドウ畑はもちろんビオディナミで栽培し、醸造時には二酸化硫
黄をできうる限り使用せず、天然酵母で醗酵させ、もちろん補糖もしません。できるワインは、やや辛口(やや甘口?)で濃厚な果実味の中にの透明感を感じる秀逸なシュナン・ブランです。

 

 実はこのワインの名前の最後にある「アンフォール」とは、古代ローマ時代の醗酵および貯蔵タンクである「アンフォラ(甕:かめ)」を使用して造られたワインということを示しています。マルク・アンジェリは、従来の樽熟成のワインにあきたらず、わざわざ甕造りの本場ジョージア(数千年の甕造りの歴史を持つ世界最古のワイン産地)より300リットルの素焼きの甕(=アンフォール)を取り寄せ、実験的に醸造したものが、このワインなのです。
 
 

 抜栓してみると、キーウィやメロン、青りんご、つづいてオレンジ、はちみつ、梅などの濃いめの酸味と甘味を持ったフルーツのアロマを感じます。一口含むと、マンゴーや洋ナシの風味を感じます。落ち着いた優しい味わいです。いつものボリューム感はあまりなく、濃厚でありながらもさっぱりとした美味しさです。
 このアンフォール製のワインは、今までのようにボリューム感があって残糖分を感じるスタイルではなさそうです。
 

 聞くところによると、2015ヴィンテージからは、従来の樽熟成のものと並行して、ドイツ製の1000リットルの甕を使用して醸造も行うようです。

 
 

 正直言って、サンソニエールのシュナン・ブランには少し「飽き」を感じていたので、この変貌ぶりには驚かずにはおれません。マルク・アンジェリの進化にはただただ敬服するのみです。

 
 
 

 申し訳ございませんが、このワインは完売しております。

 ご興味のおありの方は、2015年がリリース(2016年秋以降)されるまで今しばらくご辛抱ください。
 

 参考価格:5,800円(税別)

美酒礼賛 第13回2016年2月12日(金)

 
Malberg-Kreutles
 
 

 第13回は、オーストリアをの代表する銘醸地ヴァッハウ(現地では「ワッハウ」と発音されているようですが、ここでは慣例に従って「ヴァッハウ」と表記させていただきます)のグリューナー・ヴェルトリーナーです。
 オーストリアも21世紀に入り、劇的に変貌しているワイン産地のひとつです。
 
 

 1985年の「ジエチレングリコール混入事件」によって地に堕ちた信用を取り戻すべく、様々な改革を推し進めてきました。そうして1990年代後半にはオーストリアワインは世界的な評価を受けるまで回復してきました。21世紀になり、さらなる努力が求められるなか、有機栽培を実践する生産者が急速に増えてきました。
 

 今回ご紹介させていただく生産者は、そんなオーストリア自然派の急先鋒とも呼べる存在です。
 
 

 2013年クロイトレス・グリューナー・ヴェルトリーナー
 生産地:オーストリア,ニーダーエステライヒ州ヴァッハウ
 生産者:ファイダー・マルベルク
 品 種:グリューナー・ヴェルトリーナー100%
 
 

 当主のペーター・マルベルクは、カリフォルニアのナパヴァレーを振り出しにトスカーナ、スイス、ドイツ、ニュージーランドなどで研鑽を積み、2008年独立。ヴァッハウに醸造所を設立しました。
 有機農法を実践し、貴腐果を使用せず、野生酵母で醗酵させ、酸化防止剤の使用はボトリング時のみという徹底ぶりです。その結果として、真にテロワールを反映した、硬質ではありますが、上品でエレガンスに満ちたワインを造り上げています。

 

 抜栓してみると、グレープフルーツやカリン、つづいてパッションフルーツやマンゴーなんどの南国系のフルーツのアロマを感じます。一口含むと、凝縮した果実味と芯の通った美しい酸とのバランスが素晴らしく、すがすがしい余韻が残ります。
 この生産者の造るリースリングは硬質な印象が強く飲み手を選ぶかもしれませんが、このグリューナー・ヴェルトリーナーは最初から柔らかく親しみやすいワインです。特に和食との相性は抜群で、(わさび醤油を使わない)お寿司や焼き魚など何でも合わせられるので、私たち日本人にとってたいへん重宝する白ワインです。
 
 

 生産量はわずか8000本! 希少な1本です。

 

 参考価格:3,800円(税別)
 

 詳しくは、コチラまで。

美酒礼賛 第12回2015年12月10日(木)

 

2015/11/14 11:02

2015/11/14 11:02


 
 

 第12回は、シャンパーニュを取り上げたいと思います。
 今回ご紹介するラエルト・フレールは、シャンパーニュの中心地エペルネの南シャヴォー村においてビオディナミ(≒有機栽培)で原料ブドウを栽培している期待の若手生産者です。『ワイナートVol.65』2012年冬号の特集「シャンパーニュ 次世代を担う! 期待の造り手10人」の中に選ばれていました。
 
 

 NV ウルトラディション・エクストラ・ブリュット(ラエルト・フレール)
 生産地:フランス,シャンパーニュ地方シャンパーニュAOC
 品 種:ピノ・ムニエ60%,シャルドネ30%,ピノ・ノワール10%
 
 

 現在の日本のシャンパーニュ市場は、21世紀初頭からから始まったレコルタン・マニピュラン(略してRM:自社畑のブドウのみで造るシャンパーニュ生産者のこと。ブルゴーニュ地方でいうところの「ドメーヌ」。また自前のブドウと買い付けたブドウを使用して造る大手のシャンパーニュ生産者はネゴシアン・マニピュラン:NMという。)のブームも一段落し、グラン・マルクと呼ばれる大手シャンパーニュ・メゾンと中小のRMが良い意味で共存しています。そんな状況下、このRM(ほとんど自社ブドウでまかなっているが、正確にはNM)のラエルト・フレールのシャンパーニュにはどんな特長があるのでしょうか。
 

 1889年設立の家族経営の生産者。現在6代目のオーレリアン・ラエルトが品質をさらに向上させるべく精力的に活動しています。
 具体的には、ビオディナミを実践(2005年より)し、収穫後、古典的な垂直式のブドウ圧搾機を使い搾汁、野生酵母を使用し樽醗酵による醸造を行っています。
 シャンパーニュの「造り」としては理想的といえるスペックです。
 

 このキュヴェに関しては、実に40%の比率でリザーヴワインをブレンド。瓶内二次発酵終了後、澱とともに6か月間瓶内熟成、最後にドザージュ(甘味付け)はほんの少し(4.5g/L)。デゴルジュマン(澱抜き:出荷直前に行う)は、2014年12月。ちょうど1年前です。

 

 リンゴ、カリン、アプリコットなどのアロマが美しく、味わいはこのクラスのシャンパーニュにしてはたいへん濃厚。素晴らしいです。
 この価格でこの味わい!
 

 シャンパーニュ好きなら、泣いて喜ぶ(?)傑出した1本です。
 
 
 参考価格:6,200円(税別)
 
 

 クリスマス、お正月にいかがですか。
 詳しくは→こちらで。