
ポップなオレンジワインに出会いました。
「オレンジワイン」と聞いて眉をひそめる向きも多いかもしれません。
実はかくいう私もオレンジワインは苦手です。美味しいと思えるオレンジワインと出会うことが滅多にないからです。
そもそもオレンジワインってどんなワインなのでしょうか?
オレンジワインとは,単にオレンジ色をしたワインということではなく,伝統的な赤ワインの醸造法を用いて造る「白ワイン」のことです。具体的には,果皮と果汁を長時間接触させ,そのまま発酵に導きます。スキンコンタクトと呼ばれるこの工程は,近年テロワールを意識した白ワインを醸造する場合に積極的に取り入れられていますが,長くても数時間から数日程度です。しかし,オレンジワインの場合は,さらに長期間にわたりスキンコンタクトを行い,醗酵に導くため,3~4週間果皮と接触させておく造り手もいます。
スキンコンタクトを行うと,果汁の中に果皮の持つ色素やフェノール類,そしてタンニンが抽出されます。抽出の際,多少の酸化も伴い,ワインが濃い黄色,場合によってはほのかなオレンジ色に染まります。通常,白ワインを造る場合には,収穫後すぐに圧搾して果皮と果汁を分けますが,オレンジワインはこのように果皮の成分をしっかりと生かすので,風味にも強い個性が出るのです。
さて、今回取り上げるワインは,
2018 パンパネオ・アイレン(エセンシア・ルラル)
2018 Pampaneo Airen Bodegas Esencia Rural
生産地:スペイン,カスティージャ・ラ・マンチャ州ケロ村
生産者:エセンシア・ルラル
品 種:アイレン100%
ここで生産者のエセンシア・ルラルについて少し説明を。
実は何世代にも渡りブドウの栽培やワインの醸造を行い,地元のマーケット向けにブレンド・ワインを造ってきました。 自社ブランドの設立は2002年。代々続く伝統的な栽培法を実践しながら,人の手を極力加えない栽培技法および醸造法でワインを造り出しています。スペイン新世代のバリバリの自然派生産者です。
では抜栓してみましょう。
色は,ほんのりオレンジがかったゴールド。香りは,黄桃,アプリコット,ナッツ,ヨード,…と複雑な表情をみせてくれます。
ひとくち含むと,最初は少しだけ酸化臭を感じますが,ふたくち目には濃厚でまろやかな果実味に薬草の風味が溶け込んで…。果実味と酸味のバランスもGOOD。余韻もそこそこ長いです。
そうです。
オレンジワイン特有のいやなクセ(強烈な個性)がほとんどないんです。
何て楽しいオレンジワインでしょう!
この聞きなれない「アイレン」と言うブドウ品種は,実はスペインで最大の栽培量を誇る白ワイン用のブドウ品種なのです。ブランデーやシェリー酒の原料としてまた飲みやすくするために濃厚な赤ワインとブレンドして使われることが多いらしいです。そして,このパンパネオは何とフィロキセラ禍(*)以前から植わっているアイレンのブドウ畑(樹齢90~100年)から造られているのだそう。
(*)フィロキセラ禍:フィロキセラ(ぶどう根あぶら虫)という昆虫がブドウ樹にとりつくと5年程度でその樹を枯らせてしまう。この害虫が1860年代より19世紀末にかけてヨーロッパ全土のブドウ畑を壊滅状態にした。
こんなに素晴らしいワインなのですが,お値段はというと,…。
チリワイン並みの1,700円(税別)なのです!
ちょっとすご過ぎます!
合わせる料理は,ズバリ,タイ料理です。ヤムウンセン(春雨のサラダ)からグリーンカレーまでこれ1本でOK。
ポップでオシャレなスペイン産オレンジワインです。
参考価格:1,700円(税別)