第20回は日本ワインの白です。第3回では城戸ワイナリーを、第9回ではボーペイサージュを取り上げました。今回は神戸ワイナリーです。
ここで神戸ワイナリーの歴史をおさらいしておきましょう。1979年に「一般財団法人神戸みのりの公社」として設立され、ファーストヴィンテージは1983年。以来30年以上にわたって営々とワインを造り続けている、老舗の国産ワイナリーです。ただその道のりは決して平坦なものではありませんでした。2008年には300万本もの不良在庫を抱え、製造元の「神戸みのりの公社」に対し、スポンサーの神戸市がXX億円の追加出資を行って救済したこともありました。また阪神間のワインファンからは「コープ(生協)さんで大量に売っているあのイマイチなワインね」とあまり評判は良くありません。
ところが、神戸ワインは変わりつつあるのです!
その代表選手が今回取り上げる「ベネディクシオン・ブラン」なのです。
2016 ベネディクシオン・ブラン(神戸ワイナリー)
生産地:日本,兵庫県神戸市
生産者:神戸ワイナリー
品 種:シャルドネ100%
このベネディクシオンのシリーズは、現在北海道函館市の「農楽蔵(のらくら)ワイナリー」で醸造を担当されている佐々木佳津子(ささき・かずこ)さんが2008年にフランス帰国後から神戸ワイナリーで着手された新プロジェクトです。2010年に赤と白を初リリースし、その2008年産ルージュは「2010年国産ワインコンクール」で銅賞を、2009年産ブランは「2010年ジャパン・ワイン・チャレンジ」で銅賞をそれぞれ獲得しました。佐々木さん自身は2012年には神戸ワイナリーを離れましたが、その後もベネディクシオンは粛々とと造られており、この2016年産のブランは「2017年ジャパン・ワイン・チャレンジ」で金賞を受賞しているのです。
それではグラスに注いでみましょう。
色は透明感のある淡い黄色。グレープフルーツ、洋ナシなどのアロマを感じ、つづいてミントのニュアンスも。口に含むと爽やかな柑橘系の味わいとともにほど良いコクもあり、フィニッシュには心地よい苦みが残ります。ちょっと若いですが、あと半年ほどの瓶熟成で木樽の風味が溶け込み、より美味しくなることでしょう。
このベネディクシオンは傑出したシャルドネとは言えませんが、なかなかどうしてイケてます。同じ価格帯のブルゴーニュ・ブラン(たとえばジャド社など)と比較しても決して見劣りしません。
ベネディクシオンとはフランス語で「天の恵み」という意味です。神戸市北区と西区にあるブドウ畑の「天の恵み」をこれから神戸ワイナリーはどう生かしていくのか。
「神戸ワインの進化」が楽しみです。
参考価格:2,667円(税別)