美酒礼賛 第31回2020年6月9日(火)

 
Capucha-Fossil-Branco
 
 

ポルトガルの貴婦人に出会いました。
 
 

 ポルトガルの白ワインといえば私の知っているものは,若飲みの「ヴィーニョ・ヴェルデ」ぐらいなもので,ほかにどんな白ワインがあるのかさっぱりわかりません。自分の勉強不足を棚に上げてはいけませんが,ポルトガルの赤は何となくイメージが湧いてくるのですが,白は全く?でした。
 
 

 さて、今回取り上げるワインは,
 

 2017 フォッシル・ブランコ(ヴァレ・ダ・カプーシャ)
 2017 Fossil Branco Vale da Capucha
 生産地:ポルトガル,リスボン北部トレシュ・ヴェドラシュ
 生産者:ヴァレ・ダ・カプーシャ
 品 種:フェルナン・ピレシュ50%,アリント35%,カスタス・レジオナイス15%
 
 生産者のヴァレ・ダ・カプーシャについて少し説明を。
 当主のペドロ・マルケシュは,2005年にリスボンの農業専門学校卒業し,ヨーロッパや新世界のワイナリーで働きながら,故郷のトレシュ・ヴェドラシュ(ポルトガルの首都リスボンから北へ30kmのところ)で少しずつ家族の畑を植えなおし,2009年に初めて自身のワインを造りました。2015年にはビオ認証を取得。キンメリジャン土壌(フランス・シャブリ地区で有名)を活かし,酸化防止剤不使用の醸造技法でワイン造りを開始。今まさに羽ばたこうとしている新世代のポルトガルの自然派生産者です。
 
 

 では抜栓してみましょう。
 色は,ややうすいゴールド。香りは,グレープフルーツ,メロン,少しすると枇杷,マンゴーやパイナップルなどの南国のフルーツも。
 一口含むと,最初は酸化防止剤不使用醸造時に特徴的なソーダ水のような辛さを感じますが,少し時間がたつと濃厚な果実味ときちっとした伸びやかな酸が高い次元で調和しているのがわかります。意外にボディもあり,最後はドライに締めくくり,長い余韻となって残ります。

 
 

 これは,まるでポルトガルの貴婦人を想わせる「リッチなシャブリ」です。
 

 実は,ここトレシュ・ヴェドラシュの地層は辛口白ワインの代名詞的存在であるフランスのシャブリ地区の地層と同じキンメリジャン階の石灰岩質だそうです。これは深い海であった時代の貝殻の化石を多く含んでいるのが特徴です。エチケットのアンモナイトの化石の図柄もそこからでてきているのでしょう。ドライなフィニッシュは,まるでシャブリそのものです!
 

 恥ずかしながらフェルナン・ピレシュを始めとする3種のブドウ品種については全く?ですが,ポルトガルは250種を超える独自品種が今でも栽培されているという固有品種のメッカのようなところなのです。
 

 このワインは,独自品種にありがちな変なクセもなく,国際的なワインマーケットにおいてフランスやイタリアの銘醸ワインに比肩しうる一流の品質と個性を持っています。
 
 

 合わせる料理は,夏野菜とエビや貝柱などの魚介類をふんだんにあしらったサラダで決まりです。
 
 

 価格もお手頃。かなりイケてるポルトガルの貴婦人です。
 
 

 参考価格:2,800円(税別)