第27回は北イタリア・アオスタ渓谷産のミュスカです。
シャルドネ,ソーヴィニョン・ブランにちょっと飽きた方にぜひおすすめしたい1本です。
ミュスカ(マスカットのことです)というブドウ品種は,イタリアではモスカート・ビアンコと呼ばれ,国土のほぼ全域で栽培されています。ピエモンテ州のアスティ・スプマンテやモスカート・ダスティ(どちらも甘口)などが特に有名です。また,北アフリカのチュニジアとシチリア島の間に浮かぶパンテッレリーア島で造られるモスカート・ディ・パンテッレリーアは極上のデザートワインです。
さて,今回取り上げるヴァッレ・ダオスタのミュスカは,甘口ではなく辛口仕立てです。
陽春にピッタリな白ワインです。
2018 シャンバーヴ・ミュスカ(アンセルメ)
2018 Chambave Muscat Maison ANSELMET
生産地:イタリア,ヴァッレ・ダオスタ州ヴァッレ・ダオスタDOC
生産者:レナート・アンセルメ
品 種:ミュスカ(=モスカート・ビアンコ)100%
醸 造:醗酵後,ステンレスタンクにて3~4ヶ月の熟成
ヴァッレ・ダオスタ州はピエモンテ州の州都トリノから北へ80kmほどのところにあるフランス国境にほど近いワイン産地。北はスイス,西はフランスに接しています。イタリアで最も小さい州です。「ミュスカ」というカタカナ表記を見てフランス語圏であることがわかります。イタリア語とフランス語の両方が公用語となっているめずらしい州です。州都アオスタから東へ20kmほどのところにシャンバーヴの村があり,そこで栽培されているミュスカを原料に造られる辛口の白ワインがこの「シャンバーヴ・ミュスカ」なのです。
それでは抜栓してみましょう。色は,ほんの少し緑がかった淡いイエロー。香りは,花ではユリ,フルーツではメロンやグレープフルーツ,ハーブではバーベナ,ローズマリー,…。そしてハチミツのような甘いニュアンス。アンセルメ社のホームページではこのワインの香りの表現に”kaleidoscopic”日本語で「万華鏡のような」という形容がされていました。まさに万華鏡のようにさまざまアロマの表情を見せてくれます。
一口含むと,口当りはやさしく,果実味は濃厚でふくらみがあり,アルザス産ミュスカと比べ残糖分は少なくややドライな印象です。
本当に楽しい白ワインです。
アルザスのミュスカはどちらかというと個性が強く飲み手を選ぶ場合が多いですが,このシャンバーヴ・ミュスカは誰からも愛されるフレンドリーな風味を持っています。合わせる料理としては,菜の花のペペロンチーノや塩コショウで食べる串カツなんてのも面白いかもしれません。
参考価格:3,200円(税別)