作成者別アーカイブ: rvgcjp

2020年度秋期ワインセミナーのご案内2020年9月17日(木)

 
Taurasi

 
 
 10月からのNHK文化センターで、私が講師を勤めさせていただいておりますワインセミナーの詳細が決まりましたので、ご案内させていただきます。
 

 withコロナ時代のワイン講座は、感染予防に万全の注意を払って取組んでおります。
 

 ご検討の程よろしくお願いいたします。
 
 

①NHK文化センター神戸教室スーペリアクラス(毎月第2金曜日午後6時30分~)
 テーマ:次代を担うブドウ品種
 詳しくは→ こちら
 

②NHK文化センター梅田教室(毎月第1水曜日午後7時~)
 テーマ:次代を担うブドウ品種
 詳しくは→ こちら
※残り若干名です。お急ぎください。
 

③NHK文化センター守口教室(毎月第1金曜日午後6時30分~)
 テーマ:カリフォルニアワイン
 詳しくは→ こちら
 

④NHK文化センター京都教室(毎月第2水曜日午後6時30分~)
 テーマ:ワイン超入門
 詳しくは→ こちら
 

⑤NHK文化センター西宮ガーデンズ教室(毎月第2日曜日午後1時~)
 テーマ:ブルゴーニュのテロワールⅢ
 詳しくは→ こちら
※残り若干名です。お急ぎください。
 

 以上5クラスです。
 
 

 ご興味をお持ちの方は各文化センターに直接お問合せください。
 

 ワインビギナーも安心なテーマが多いです♫
 
 

 みなさま、よろしくお願いします。

気になるワイン その842020年6月30日(火)

 
Guillard-GC-Aux-Corvees
 
 

 驚愕のジュヴレ・シャンベルタンに出会いました。
 
 

 とりあえず、簡単な説明を。
 

<赤>
 2017 ジュヴレ・シャンベルタンVVオー・コルヴェ(ギィヤール)
 2017 Gevrey Chambertin Vieilles Vignes Aux Corvees domaine Guillard
 生産地:フランス,ブルゴーニュ地方ジュヴレ・シャンベルタンAOC
 生産者:ギィヤール
 品 種:ピノ・ノワール100%
 

 1952年設立。ジュヴレ・シャンベルタン村に5haのみ所有する小規模ドメーヌ。
 平均樹齢65年の畑。栽培においては除草剤は使用しない。生産量はわずか3,600本。
 熟した黒い果実の香り。口当りはやさしく,味わいに深みがあり,ボディも十分。それでいてなめらかなテクスチュアが毛並みの良さを物語っています。
 

 と、まあこんな感じの赤です。
 
 

 ブルゴーニュ地方コート・ドール(黄金の丘)で最も人気のある赤ワイン産地を3つあげるとすれば,…。順に(1)ヴォーヌ・ロマネ,(2)ジュヴレ・シャンベルタン,(3)シャンボール・ミュジニとなるでしょう。世界的な人気を博しているジュヴレ・シャンベルタン村は,30人以上の有力な生産者が切磋琢磨するアペラシオンです。アルマン・ルソー,セラファン,ベルナール・デュガ・ピィ,クロード・デュガ,フーリエ,…! そんなスタープレイヤーぞろいの中で,このギィヤールは少し控えめな立ち位置です。ジュヴレ・シャンベルタン村全アペラシオンの総栽培面積は500haあまりですが,ドメーヌ・ギィヤールはわずか5ha弱ほどしか所有していません。現在日本で購入できるギィヤールのワインは村名格の単一畑3種と1級格の『レ・コルボー』,およびACブルゴーニュの5種類です。今回取り上げるのは村名格の『オー・コルヴェ』です。
 
 

 さっそく抜栓してみましょう。
 色は少し紫がかった濃いルビー。プラム,デーツ(なつめやし),チョコレート,…の複雑な香り。
 一口含むと,若いピノ・ノワールにもかかわらずソフトな口当たりがうれしいです。濃厚な果実味がしっかりとした酸と絶妙のバランスを保ち,肌理の細かいテクスチャーとなって口中に広がります。のどごしはたいへん心地よく,余韻もとても長いです。感動です!
 

 このジュヴレ・シャンベルタンはただものではありません!
 

 この味わいならプルミエ・クリュ(1級畑)と言っても差支えないと思います。それもそのはずで,ラベルにも”Vieilles Vignes”(ヴィエイユ・ヴィーニュ=古木)と表記されているのですが,樹齢はなんと65年! 超古木なんです。そして収量は20~40hl/haと驚異的に少ないのです。
 

 今飲んでも,もちろん美味しいのですが,3年ぐらいの熟成でジュヴレ・シャンベルタンの特長である「堅牢」なニュアンスが現れ,その後10年以上は私たちを楽しませてくれることでしょう。
 

 10数年前に『神の雫』でこれの2001VTが取り上げられているのですね。
 さもありなんです。
 
 

 ところで,最近のブルゴーニュワインの高騰ぶりは阿鼻叫喚(?)状態ですが,この『オー・コルヴェ』であれば,まず12,000円はくだらないクオリティーを感じます。
 

 余談ですが,ここのトップ・キュヴェである1級畑『レ・コルボー』は,かつてワイン評論家のジャッキー・リゴーをして「コート・ドールで最もカリテ・プリな(=コスパの高い)ワイン」といわせしめた1本なのです。

 
 

 合わせる料理としては,これまた王道のコック・オー・ヴァンでいただきたいと思います(本当はウズラのローストが食べたいです)。
 
 

 みなさまも、ぜひ。
 
 

 さて、気になるお値段は,…。

 
 

 7,300円(税別)です。

 

美酒礼賛 第32回2020年6月26日(金)

 
Rural-Pampaneo-Airen
 
 

 ポップなオレンジワインに出会いました。
 
 

 「オレンジワイン」と聞いて眉をひそめる向きも多いかもしれません。
 実はかくいう私もオレンジワインは苦手です。美味しいと思えるオレンジワインと出会うことが滅多にないからです。
 

 そもそもオレンジワインってどんなワインなのでしょうか?
 

 オレンジワインとは,単にオレンジ色をしたワインということではなく,伝統的な赤ワインの醸造法を用いて造る「白ワイン」のことです。具体的には,果皮と果汁を長時間接触させ,そのまま発酵に導きます。スキンコンタクトと呼ばれるこの工程は,近年テロワールを意識した白ワインを醸造する場合に積極的に取り入れられていますが,長くても数時間から数日程度です。しかし,オレンジワインの場合は,さらに長期間にわたりスキンコンタクトを行い,醗酵に導くため,3~4週間果皮と接触させておく造り手もいます。
 スキンコンタクトを行うと,果汁の中に果皮の持つ色素やフェノール類,そしてタンニンが抽出されます。抽出の際,多少の酸化も伴い,ワインが濃い黄色,場合によってはほのかなオレンジ色に染まります。通常,白ワインを造る場合には,収穫後すぐに圧搾して果皮と果汁を分けますが,オレンジワインはこのように果皮の成分をしっかりと生かすので,風味にも強い個性が出るのです。
 
 

 さて、今回取り上げるワインは,
 

 2018 パンパネオ・アイレン(エセンシア・ルラル)
 2018 Pampaneo Airen Bodegas Esencia Rural
 生産地:スペイン,カスティージャ・ラ・マンチャ州ケロ村
 生産者:エセンシア・ルラル
 品 種:アイレン100%
 

 ここで生産者のエセンシア・ルラルについて少し説明を。
 実は何世代にも渡りブドウの栽培やワインの醸造を行い,地元のマーケット向けにブレンド・ワインを造ってきました。 自社ブランドの設立は2002年。代々続く伝統的な栽培法を実践しながら,人の手を極力加えない栽培技法および醸造法でワインを造り出しています。スペイン新世代のバリバリの自然派生産者です。
 
 

 では抜栓してみましょう。
 色は,ほんのりオレンジがかったゴールド。香りは,黄桃,アプリコット,ナッツ,ヨード,…と複雑な表情をみせてくれます。
 ひとくち含むと,最初は少しだけ酸化臭を感じますが,ふたくち目には濃厚でまろやかな果実味に薬草の風味が溶け込んで…。果実味と酸味のバランスもGOOD。余韻もそこそこ長いです。
 そうです。
 オレンジワイン特有のいやなクセ(強烈な個性)がほとんどないんです。

 
 

 何て楽しいオレンジワインでしょう!

 
 

 この聞きなれない「アイレン」と言うブドウ品種は,実はスペインで最大の栽培量を誇る白ワイン用のブドウ品種なのです。ブランデーやシェリー酒の原料としてまた飲みやすくするために濃厚な赤ワインとブレンドして使われることが多いらしいです。そして,このパンパネオは何とフィロキセラ禍(*)以前から植わっているアイレンのブドウ畑(樹齢90~100年)から造られているのだそう。
 

(*)フィロキセラ禍:フィロキセラ(ぶどう根あぶら虫)という昆虫がブドウ樹にとりつくと5年程度でその樹を枯らせてしまう。この害虫が1860年代より19世紀末にかけてヨーロッパ全土のブドウ畑を壊滅状態にした。

 
 

 こんなに素晴らしいワインなのですが,お値段はというと,…。
 チリワイン並みの1,700円(税別)なのです!
 ちょっとすご過ぎます!
 
 

 合わせる料理は,ズバリ,タイ料理です。ヤムウンセン(春雨のサラダ)からグリーンカレーまでこれ1本でOK。
 
 

 ポップでオシャレなスペイン産オレンジワインです。
 
 

 参考価格:1,700円(税別)

気になるワイン その832020年6月20日(土)

 
Pape-Clement-2nd
 
 

 堂々としたグラーヴの赤に出会いました。♫
 
 

 とりあえず、簡単な説明を。
 

<赤>
 2015 クレマンタン・ド・パプ・クレマン
 2015 Clementin de Pape Clement
 生産地:フランス,ボルドー,グラーヴ地区ペサック・レオニャンAOC
 所有者:ベルナール・マグレ
 品 種:カベルネ・ソーヴィニョン58%,メルロー42%(栽培面積比率)
 

 シャトー・パプ・クレマンは,グラーヴ地区の優良シャトー。1990年代末より醸造コンサルタントにミシェル・ロランを起用し,劇的に品質が向上しています。これはそのセカンドラベル。
 ボルドーの中でもこの地域のワインはスムーズな飲み口のワインが多いです。このワインはそれだけではなく,木樽由来の風味がとても素晴らしく,しっかりとした果実味と相まって気品のある美味しいワインに仕上がっています。
 

 と、まあこんな感じの赤です。
 
 

 何千というシャトーがひしめくボルドーの中でもグラーヴ地区の赤ワインは,あまり馴染みがない方も多いかもしれません。それもそのはずで,スムーズな飲み口のワインが多いので,同じボルドーのメドックやサンテミリオン&ポムロールと比べてあっさりとした印象でイマイチ人気がありません。そうなると結局レストランのワインリストに載ることも少なくなり,さらに飲む機会が減っていくという悪循環です。
 そんなグラ―ヴでも,実は1級格付けのシャトー・オー・ブリオン(*)を始め,シャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン,シャトー・パプ・クレマン,ドメーヌ・ド・シュヴァリエ,シャトー・スミス・オー・ラフィット,…と,なかなか豪華なワインが存在しています。
 

(*)1989年ハリウッド映画『ゴーストバスターズ2』で,主人公のビル・マーレ―とシガニー・ウィーバーがディナーを楽しむシーンに出てましたね。
 

 そのグラーヴのトップクラスのひとつ,シャトー・パプ・クレマンのこれはセカンドラベルです。
 セカンドラベルとは,同一シャトー(ブドウ園)内から収穫されたブドウを使用しファーストラベルの品質には届かないものの十分な品質を持つブドウで造られたワインのことを指します。端的に言ってファーストラベルの弟分のワインです。
 
 

 さっそく抜栓してみましょう。
 色は濃いガーネット。プラム,枯葉,腐葉土,チョコレート,…の美味しそうな香り。
 一口含むと,口当たりはソフト。ミディアムボディの洗練された果実味が口中に広がります。飲み口は例によってスムーズなのですが,決して味わいは薄くはなくオークの風味と合わさって十分な余韻をもたらしてくれます。
 

 一般的に言って,濃厚でインパクトのあるワインはワインジャーナリストの評価点も高くなる傾向があり,それにつられる形で人気も価格も高くなりやすいです。その点でグラーヴ産の赤ワインはテロワール的にはちょっとビミョーですが,このシャトー・パプ・クレマンは,オーナーのベルナール・マグレ氏の号令一下,力強いワインを造り出すべく前世紀より努力しています。この2015ヴィンテージはまさにその姿勢がストレートに反映された素晴らしい1本に仕上がっています。
 
 

 合わせる料理としては,これまた王道のローストビーフでいただきたいと思います。
 
 

 みなさまも、ぜひ。
 
 

 さて、気になるお値段は,…。
 
 

 6,000円(税別)です。
 

 ではでは。

コメント

コメント

美酒礼賛 第31回2020年6月9日(火)

 
Capucha-Fossil-Branco
 
 

ポルトガルの貴婦人に出会いました。
 
 

 ポルトガルの白ワインといえば私の知っているものは,若飲みの「ヴィーニョ・ヴェルデ」ぐらいなもので,ほかにどんな白ワインがあるのかさっぱりわかりません。自分の勉強不足を棚に上げてはいけませんが,ポルトガルの赤は何となくイメージが湧いてくるのですが,白は全く?でした。
 
 

 さて、今回取り上げるワインは,
 

 2017 フォッシル・ブランコ(ヴァレ・ダ・カプーシャ)
 2017 Fossil Branco Vale da Capucha
 生産地:ポルトガル,リスボン北部トレシュ・ヴェドラシュ
 生産者:ヴァレ・ダ・カプーシャ
 品 種:フェルナン・ピレシュ50%,アリント35%,カスタス・レジオナイス15%
 
 生産者のヴァレ・ダ・カプーシャについて少し説明を。
 当主のペドロ・マルケシュは,2005年にリスボンの農業専門学校卒業し,ヨーロッパや新世界のワイナリーで働きながら,故郷のトレシュ・ヴェドラシュ(ポルトガルの首都リスボンから北へ30kmのところ)で少しずつ家族の畑を植えなおし,2009年に初めて自身のワインを造りました。2015年にはビオ認証を取得。キンメリジャン土壌(フランス・シャブリ地区で有名)を活かし,酸化防止剤不使用の醸造技法でワイン造りを開始。今まさに羽ばたこうとしている新世代のポルトガルの自然派生産者です。
 
 

 では抜栓してみましょう。
 色は,ややうすいゴールド。香りは,グレープフルーツ,メロン,少しすると枇杷,マンゴーやパイナップルなどの南国のフルーツも。
 一口含むと,最初は酸化防止剤不使用醸造時に特徴的なソーダ水のような辛さを感じますが,少し時間がたつと濃厚な果実味ときちっとした伸びやかな酸が高い次元で調和しているのがわかります。意外にボディもあり,最後はドライに締めくくり,長い余韻となって残ります。

 
 

 これは,まるでポルトガルの貴婦人を想わせる「リッチなシャブリ」です。
 

 実は,ここトレシュ・ヴェドラシュの地層は辛口白ワインの代名詞的存在であるフランスのシャブリ地区の地層と同じキンメリジャン階の石灰岩質だそうです。これは深い海であった時代の貝殻の化石を多く含んでいるのが特徴です。エチケットのアンモナイトの化石の図柄もそこからでてきているのでしょう。ドライなフィニッシュは,まるでシャブリそのものです!
 

 恥ずかしながらフェルナン・ピレシュを始めとする3種のブドウ品種については全く?ですが,ポルトガルは250種を超える独自品種が今でも栽培されているという固有品種のメッカのようなところなのです。
 

 このワインは,独自品種にありがちな変なクセもなく,国際的なワインマーケットにおいてフランスやイタリアの銘醸ワインに比肩しうる一流の品質と個性を持っています。
 
 

 合わせる料理は,夏野菜とエビや貝柱などの魚介類をふんだんにあしらったサラダで決まりです。
 
 

 価格もお手頃。かなりイケてるポルトガルの貴婦人です。
 
 

 参考価格:2,800円(税別)
 

気になるワイン その822020年5月28日(木)

 
Principiano-La-Romualda
 
 

 傑出した自然派バルベーラに出会いました。♪
 
 

 とりあえず、簡単な説明を。
 

<赤>
 2013 バルベーラ・ダルバ・ラ・ロムアルダ(プリンチピアーノ)
 2013 Barbera d’Alba La Romualda Azienda Vitivinicola Principiano
 生産地:イタリア,ピエモンテ州バルベーラ・ダルバDOC
 生産者:プリンチピアーノ
 品 種:バルベーラ100%
 

 プリンチピアーノ家は1900年代初頭よりブドウ栽培家でした。
 1993年に現当主になり,2004年より栽培・醸造両面において劇的な改革を行いました。
 すなわち有機栽培を実践し,収量を抑え,醸造時には酸化防止剤を添加せず,野生酵母を使用し,温度管理も行いません。
 樽熟成18ヶ月。単一畑ロムアルダからの1本。
 その味わいは,リッチで気品があり,余韻もすばらしいです。
 まさに最上級のバルベーラです!
 

 と、まあこんな感じの赤です。
 
 

 生産者のプリンチピアーノについて少し詳しく。
 現当主のフェルディナンドは1974年モンフォルテ生まれの46歳。アルバ醸造学校を卒業して,1993年よりワイン造りを開始。近代的なワイン造りが全盛の時代だったので,売れっ子のコンサルタントを仰ぎ,回転式発酵,バリック熟成など近代的スタイルのワイン造りを積極的に行っていました。しかし,2003年頃より自身の体が化学物質を受け付けなくなり,2004年より栽培・醸造ともに劇的な改革を行い,完全に自然派に転換。その転向を彼は「自分の個人的な理由である」として,有機認証も申請せず,今後もしない様子。徹底した有機栽培を実践し,収穫量を抑え,醸造時に酸化防止剤を添加せず,野生酵母を使用し,温度管理も行わないという徹底ぶり。
 そんな彼の造る単一畑のバルベーラです。
 
 

 前フリが長くなりました。さっそく抜栓してみましょう。
 色は黒みがかったルビー。カシスやバラなどのアロマに,樽熟成によるバニラやコーヒーの香りも。そしてうれしいことに自然派(酸化防止剤を添加せずに醸造時)特有のあの困りものの還元香は全く感じません。
 一口含むと,濃厚でかつ瑞々しい果実味が口中に広がります。決して重くはなく,おだやかな酸と相まって上品な味わいを形成しています。余韻もたいへん長く,フィニッシュはあくまでもクリーンです。
 

 数年前に2011VT(ヴィンテージ)を試しましたが,そのときは醸造時に酸化防止剤を添加していたため,いわゆるモダンでフルボディーな万人受けするワインでした。それはそれでVERY GOODなワインでした。けれどこの2013VTの気品は何ものにも代えがたいものがあります。
 
 

 まさに,これは傑出したバルベーラOUTSTANDING BARBERAなのです!
 
 
 合わせる料理としては,甘辛い醤油ダレでいただく焼き鳥の「ねぎま」で決まりです。
 
 

 みなさまも、ぜひ。
 
 

 さて、気になるお値段は,…。
 
 

 4,500円(税別)です。
 
 

美酒礼賛 第30回2020年5月24日(日)

 
Von-Wining-Sauvignon-Blanc2
 
 

 愉快なドイツ産ソーヴィニョン・ブランに出会いました。♪

 

 ソーヴィニョン・ブランといえば,まずロワール地方のサンセール,次にボルドー地方のグラーヴ,そしてニュージーランドのマールボロ,…といったところが,高名な産地と言えるのではないでしょうか。グラーヴは第11回でシャトー・ミルボー・ブランを取り上げました。
 
 

 さて、今回取り上げるワインは,
 

 2018 ソーヴィニョン・ブランⅡ(フォン・ウィニング)
 2018 Sauvignon Blanc II Trocken Q.b.A. Von Winning Weingut GmbH
 生産地:ドイツ,ファルツ地方QbA
 生産者:フォン・ウィニング醸造所
 品 種:ソーヴィニョン・ブラン100%(ステンレスタンク熟成8ヶ月)

 

 フォン・ウィニング醸造所について少し説明を。
 19世紀初頭ドイツ南部のファルツ地方で名声を誇った『ジョルダン・エステイト』の後継者レオポルト・フォン・ウィニングが1907年にフォン・ウィニング醸造所を設立しました。彼はワイン造りに高い志を持ち,優良ドイツワイン生産者協会V.D.P.(*)設立の功労者の一人でもありました。その後,第1次および第2次世界大戦におけるドイツの敗戦の影響から抜け出せず,長らく低迷していました。2007年(100周年!)ついに起業家のアヒム・ニーダーベルガーによって再興されました。
 現在ワイナリーでは「畑の可能性を引き出し,最高品質のワインを造る」ことをモットーに,テロワールを重視した環境にやさしいブドウ栽培と人的介入を可能な限り行わないワイン造りを目指しています。
 まさに”FINE WINE”を産み出しているのですね。
 

*)優良ドイツワイン生産者協会V.D.P.(Verband Deutscher Prädikats und Qualitätsweingüter)とは,ドイツにおける上級ワイン造りにおいて主導的役割を果たしている。1910年3月19日設立。2010年5月現在,会員数は196醸造所。総栽培面積は約4900ha,ドイツ全体では約10万haなので約5%。

 
 

 では抜栓してみましょう。
 色は,淡いイエロー。香りは,パッションフルーツ,熟したオレンジなどの南洋系フルーツ!
 一口含むと,凝縮感のある果実味と丸みのある酸とのバランスが良く,やさしい味わいを生み出しています。そしてフィニッシュにはレモングラスのような風味を感じ,ワイン全体を引き締めています。
 

 ソーヴィニョン・ブランといえば,淡いグリーンイエローを呈した青草のアロマが定番ですが,これは淡いイエローとパッションフルーツ! こんな色と香りを持つソーヴィニョン・ブランは,かつてカリフォルニア産で経験したことはありますが,ヨーロッパ産では初めてかもしれません。飲んでいて楽しくなる1本です。ここのブドウ畑のテロワールはよっぽど変わっているのでしょうか!? 飲み手をこんなにハッピーな気分にしてくれるソーヴィニョン・ブランもめずらしいです。
 
 

 本当に愉快なファルツのソーヴィニョン・ブランです。
 
 

 合わせる料理は,パルミジャーノをたっぷりかけたシンプルなリゾットで決まりです。
 
 

 価格もお手頃。かなりうれしい初夏にピッタリな1本です。
 
 

 参考価格:2,500円(税別)

気になるワイン その812020年5月20日(水)

 
Chateau_Chene_Liege
 
 

 超お買得な本物のポムロールに出会いました。♫
 
 

 とりあえず、簡単な説明を。
 

<赤>
 2015 シャトー・シェーヌ・リエージュ
2015 Chateau Chene Liege
 生産地:フランス,ボルドー地方ポムロールAOC
 所有者:ニアルフェックス家
 品 種:メルロー95%,カベルネ・フラン5%
 

 1896年設立の老舗シャトー。40年以上の古木のメルローを使用し,減農薬栽培でていねいに育てられた,小さな畑から年間9000本程度の少量生産。セメントタンクで醗酵。樽熟成24ヶ月。
 ポムロールらしい優美で濃厚なスタイル。
 今飲んでも美味しいですが,10年以上は熟成可能です。
 

 と、まあこんな感じの赤です。

 
 

 ポムロールと聞くと,ボルドーの赤ワインの中でも最も高価なシャトー・ペトリュスを始め,シャトー・ル・パン,ヴュー・シャトー・セルタン,…などなど,とにかくキラ星のごとく輝く名だたるシャトー群がすぐさま思い起こされます。21世紀に入り,これらのシャトーの価格は数万円~数十万円と高騰しています。そんな高級ワイン産地のポムロールで,ポムロールACゾーンの中心地にある,わずか2ヘクタールほどの小さなブドウ園がこのシャトー・シェーヌ・リエージュです。19世紀の終わりに設立された1万本に満たない生産量の家族経営のマイクロ・ワイナリーです。
 
 

 さっそく抜栓してみましょう。
 色は黒みがかったガーネット。プラム,ブラックチェリー,…の黒系果実のアロマ,そしてロースト香の心地よいブーケ。
 一口含むと,口当たりはやさしく,きれいな酸と濃厚な果実味が相まって粘りのあるボディが口中になめらかに広がります。余韻も素晴らしく,オークの風味が長く長く残ります。
 
 

 ところで,ヒュー・ジョンソン,ジャンシス・ロビンソン共著『世界のワイン図鑑』第7版では,メルロー種の説明の中で,「メルローは単一品種としての存在感も持っており,…,ポムロールでその長所を最大限に発揮し,官能的でビロードのようになめらかなエッセンスをもたらす。」と記述されています。
 

 このシェーヌ・リエージュは「官能的でビロードの…」とまではいかないかもしれませんが,そろそろ飲み頃が始まっており,向こう10年はポムロールの快楽を堪能できることでしょう。

 
 

 合わせる料理としては,ここは王道のタンシチューでいただきたいと思います。
 
 

 みなさまも、ぜひ。
 
 

 さて、気になるお値段は,…。
 
 

 5,400円(税別)です。

 
 

 ではでは。

美酒礼賛 第29回2020年5月14日(木)

 
Ferret-Les-Menetrieres
 
 

 今回は,まさにCOOL BEAUTYなプイィ・フュイッセをご紹介します。
 
 

 第29回はブルゴーニュの白です。第1回ではACブルゴーニュ・ブランを第8回ではACコルトン・シャルルマーニュを第15回ではACサン・ヴェラン,そして第25回ではACサヴィニー・レ・ボーヌ1級畑を取り上げました。
 
 

 さて、今回取り上げるワインは,
 

 2016 プイイ・フュイッセ・オール・クラッセ ”レ・メネトリエール”(J.A.フェレ)
2016 Pouilly-Fuisse Hors Classe “Les Menetrieres” domaine J.A.Ferret
 生産地:フランス,ブルゴーニュ地方プイイ・フュイッセAOC
 生産者:J.A.フェレ
 品 種:シャルドネ100%
 

 1840年設立のプイイ・フュイッセ最良の生産者のひとつ。
 2008年ルイ・ジャドが購入し,品質が向上し続けています。
 「オール・クラッセ」とは,フェレの最上級キュヴェの呼称です。
 オーク樽にて醗酵後,そのまま16ヶ月熟成。
 マルメロのアロマにハチミツやトーストの香りが溶けあって複雑な風味を醸し出しています。柔らかな口当たり,濃厚で複雑な味わいを持ち,余韻も長いです。
 プイィ・フュイッセの枠をはるかに超えた最上級のブルゴーニュの白です。
 今飲んでも美味しいですが,20年以上は熟成できるポテンシャルがあります。
 
 

 ドメーヌ・フェレは,1840年創立の由緒あるドメーヌ。ブルゴーニュ南部マコネー地区ACプイィ・フュイッセ最良の生産者のひとりです。このアペラシオンにおいてテロワールごとにワインを瓶詰めし始めた最初の生産者でもあります。2008年よりルイ・ジャド社の傘下に入り,さらなる高みをめざしています。
 
 

 早速、抜栓してみましょう。
 色は,淡いゴールド。香りは,まず青りんご,それから柚子,すだち,レモン,オレンジなどの柑橘系,パイナップル,ハチミツ,ブリオッシュ,ヒノキ,…。さまざまなアロマがさざ波のように上品に拡がっていきます。
 一口含むと,青りんごの酸味と濃厚な果実味のバランスが厚みのあるボディを生み出しています。余韻にはシークアーサーのような風味が長く残ります。しっとりと落ち着きのある味わいを持ちながらボリューム感もあり,かつ清涼感もあります。
 
 

 なんてゴージャスなワインなんでしょう。まさに”COOL BEAUTY”という形容がピッタリとくる傑出した1本です。
 
 

 ワイン評論家のジャスパー・モリスは『ブルゴーニュ大全』の中で「レ・メネトリエールの畑はプイィ・フュイッセの真髄である」と絶賛しています。最良のプイィ・フュイッセがここにあります。

 
 

 参考価格:9,000円(税別)
 

気になるワイン その802020年5月10日(日)

 
Jadot-Beaune-1er-Cru
 
 

 ブルゴーニュの記念碑的なワインに出会いました。♫
 
 
 

 とりあえず、簡単な説明を。
 

<赤>
 2015 ボーヌ・プルミエ・クリュ・オマージュ・オー・クリマ(ルイ・ジャド)
 2015 Beaune 1er Cru Hommage aux Climats domaine Louis Jadot
 生産地:フランス,ブルゴーニュ地方ボーヌ・プルミエ・クリュAOC
 生産者:ルイ・ジャド社
 品 種:ピノ・ノワール100%
 

 ルイ・ジャド社が生まれ育ったボーヌの畑に敬意を表し,優良年である2015年産のボーヌ1級畑のワイン19種をブレンドし,スペシャル・キュヴェを造りました。
 それぞれの畑の個性が見事に調和した,奥深い味わいの1本です。
 

 と、まあこんな感じの赤です。
 
 

 言わずもがなのルイ・ジャド社ですが,復習の意味で今一度このブルゴーニュ屈指の生産者の歴史を振り返ってみましょう。
 1859年にルイ・アンリ・ドゥニ・ジャドによりメゾン設立。ジャド家はそれ以前より由緒あるブドウ栽培家としてすでに有名でした。以降ブルゴーニュの大手ネゴシアンとして,様々なアペラシオンのブドウを買付け醸造・販売してきました。それと同時にブドウ畑も次々に購入し,自社畑のワイン(=ドメーヌ)も造り続けてきました。現在はブルゴーニュに240ha(東京ドーム50個分以上の広さ)もの自社畑を有する一大ドメーヌとなっています。
 また,ルイ・ジャド社はただ単に売れるブルゴーニュワインを造っているのではなく,2011年からは自社畑において環境にやさしい栽培技法を積極的に採り入れ,2019年3月にはHVEのLEVEL3(*)の認定をフランス農業省の認定機関より受けました。真にブルゴーニュのテロワールを大切にした栽培と醸造を心掛けている生産者なのです。
 

*)HVE認証(Haute Valeur Environnementale「高い環境価値」の意)とは,ブドウの栽培から瓶詰めまで適切なアプローチを採用することを選択した農業従事者/ブドウ栽培者に与えられます。この認証は,3つのレベルで優れた環境にやさしい実践を推奨します。LEVEL3は,その最上位のもので,生物多様性の尊重,害虫対策,肥料および灌漑の騒音管理といった指標を基準に認定されます。
 
 

 前フリが長くなりました。さっそく抜栓してみましょう。
 色はルビーそのもの。チェリー,カシス,ストロベリー,シナモン,トリュフ,…などの複雑なアロマ。
 一口含むと,口当たりはやさしく,果実味がほど良いコクとなって口中に広がります。余韻もまずまずです。ですが,現時点では少し酸が高く,ボリューム感の点で物足りなさを感じます。ワインが開いておらず,当たり年の偉大さがまだ隠れているようです。
 まだ若いのですね。本当の飲み頃は2025年ぐらいからでしょうか。今飲むなら,しっかりとデキャンタージュして空気とよくなじませてから楽しんでみたい。
 
 

 合わせる料理としては,鴨のテリーヌがベストかもしれませんが,関西人の私としてはここは「ねぎ焼き」をポン酢醤油でいただきたいと思います。
 
 

 みなさまも、ぜひ。
 
 

 さて、気になるお値段は,…。
 
 

 8,000円(税別)です。
 

 ではでは。