2020年6月の記事一覧

気になるワイン その842020年6月30日(火)

 
Guillard-GC-Aux-Corvees
 
 

 驚愕のジュヴレ・シャンベルタンに出会いました。
 
 

 とりあえず、簡単な説明を。
 

<赤>
 2017 ジュヴレ・シャンベルタンVVオー・コルヴェ(ギィヤール)
 2017 Gevrey Chambertin Vieilles Vignes Aux Corvees domaine Guillard
 生産地:フランス,ブルゴーニュ地方ジュヴレ・シャンベルタンAOC
 生産者:ギィヤール
 品 種:ピノ・ノワール100%
 

 1952年設立。ジュヴレ・シャンベルタン村に5haのみ所有する小規模ドメーヌ。
 平均樹齢65年の畑。栽培においては除草剤は使用しない。生産量はわずか3,600本。
 熟した黒い果実の香り。口当りはやさしく,味わいに深みがあり,ボディも十分。それでいてなめらかなテクスチュアが毛並みの良さを物語っています。
 

 と、まあこんな感じの赤です。
 
 

 ブルゴーニュ地方コート・ドール(黄金の丘)で最も人気のある赤ワイン産地を3つあげるとすれば,…。順に(1)ヴォーヌ・ロマネ,(2)ジュヴレ・シャンベルタン,(3)シャンボール・ミュジニとなるでしょう。世界的な人気を博しているジュヴレ・シャンベルタン村は,30人以上の有力な生産者が切磋琢磨するアペラシオンです。アルマン・ルソー,セラファン,ベルナール・デュガ・ピィ,クロード・デュガ,フーリエ,…! そんなスタープレイヤーぞろいの中で,このギィヤールは少し控えめな立ち位置です。ジュヴレ・シャンベルタン村全アペラシオンの総栽培面積は500haあまりですが,ドメーヌ・ギィヤールはわずか5ha弱ほどしか所有していません。現在日本で購入できるギィヤールのワインは村名格の単一畑3種と1級格の『レ・コルボー』,およびACブルゴーニュの5種類です。今回取り上げるのは村名格の『オー・コルヴェ』です。
 
 

 さっそく抜栓してみましょう。
 色は少し紫がかった濃いルビー。プラム,デーツ(なつめやし),チョコレート,…の複雑な香り。
 一口含むと,若いピノ・ノワールにもかかわらずソフトな口当たりがうれしいです。濃厚な果実味がしっかりとした酸と絶妙のバランスを保ち,肌理の細かいテクスチャーとなって口中に広がります。のどごしはたいへん心地よく,余韻もとても長いです。感動です!
 

 このジュヴレ・シャンベルタンはただものではありません!
 

 この味わいならプルミエ・クリュ(1級畑)と言っても差支えないと思います。それもそのはずで,ラベルにも”Vieilles Vignes”(ヴィエイユ・ヴィーニュ=古木)と表記されているのですが,樹齢はなんと65年! 超古木なんです。そして収量は20~40hl/haと驚異的に少ないのです。
 

 今飲んでも,もちろん美味しいのですが,3年ぐらいの熟成でジュヴレ・シャンベルタンの特長である「堅牢」なニュアンスが現れ,その後10年以上は私たちを楽しませてくれることでしょう。
 

 10数年前に『神の雫』でこれの2001VTが取り上げられているのですね。
 さもありなんです。
 
 

 ところで,最近のブルゴーニュワインの高騰ぶりは阿鼻叫喚(?)状態ですが,この『オー・コルヴェ』であれば,まず12,000円はくだらないクオリティーを感じます。
 

 余談ですが,ここのトップ・キュヴェである1級畑『レ・コルボー』は,かつてワイン評論家のジャッキー・リゴーをして「コート・ドールで最もカリテ・プリな(=コスパの高い)ワイン」といわせしめた1本なのです。

 
 

 合わせる料理としては,これまた王道のコック・オー・ヴァンでいただきたいと思います(本当はウズラのローストが食べたいです)。
 
 

 みなさまも、ぜひ。
 
 

 さて、気になるお値段は,…。

 
 

 7,300円(税別)です。

 

美酒礼賛 第32回2020年6月26日(金)

 
Rural-Pampaneo-Airen
 
 

 ポップなオレンジワインに出会いました。
 
 

 「オレンジワイン」と聞いて眉をひそめる向きも多いかもしれません。
 実はかくいう私もオレンジワインは苦手です。美味しいと思えるオレンジワインと出会うことが滅多にないからです。
 

 そもそもオレンジワインってどんなワインなのでしょうか?
 

 オレンジワインとは,単にオレンジ色をしたワインということではなく,伝統的な赤ワインの醸造法を用いて造る「白ワイン」のことです。具体的には,果皮と果汁を長時間接触させ,そのまま発酵に導きます。スキンコンタクトと呼ばれるこの工程は,近年テロワールを意識した白ワインを醸造する場合に積極的に取り入れられていますが,長くても数時間から数日程度です。しかし,オレンジワインの場合は,さらに長期間にわたりスキンコンタクトを行い,醗酵に導くため,3~4週間果皮と接触させておく造り手もいます。
 スキンコンタクトを行うと,果汁の中に果皮の持つ色素やフェノール類,そしてタンニンが抽出されます。抽出の際,多少の酸化も伴い,ワインが濃い黄色,場合によってはほのかなオレンジ色に染まります。通常,白ワインを造る場合には,収穫後すぐに圧搾して果皮と果汁を分けますが,オレンジワインはこのように果皮の成分をしっかりと生かすので,風味にも強い個性が出るのです。
 
 

 さて、今回取り上げるワインは,
 

 2018 パンパネオ・アイレン(エセンシア・ルラル)
 2018 Pampaneo Airen Bodegas Esencia Rural
 生産地:スペイン,カスティージャ・ラ・マンチャ州ケロ村
 生産者:エセンシア・ルラル
 品 種:アイレン100%
 

 ここで生産者のエセンシア・ルラルについて少し説明を。
 実は何世代にも渡りブドウの栽培やワインの醸造を行い,地元のマーケット向けにブレンド・ワインを造ってきました。 自社ブランドの設立は2002年。代々続く伝統的な栽培法を実践しながら,人の手を極力加えない栽培技法および醸造法でワインを造り出しています。スペイン新世代のバリバリの自然派生産者です。
 
 

 では抜栓してみましょう。
 色は,ほんのりオレンジがかったゴールド。香りは,黄桃,アプリコット,ナッツ,ヨード,…と複雑な表情をみせてくれます。
 ひとくち含むと,最初は少しだけ酸化臭を感じますが,ふたくち目には濃厚でまろやかな果実味に薬草の風味が溶け込んで…。果実味と酸味のバランスもGOOD。余韻もそこそこ長いです。
 そうです。
 オレンジワイン特有のいやなクセ(強烈な個性)がほとんどないんです。

 
 

 何て楽しいオレンジワインでしょう!

 
 

 この聞きなれない「アイレン」と言うブドウ品種は,実はスペインで最大の栽培量を誇る白ワイン用のブドウ品種なのです。ブランデーやシェリー酒の原料としてまた飲みやすくするために濃厚な赤ワインとブレンドして使われることが多いらしいです。そして,このパンパネオは何とフィロキセラ禍(*)以前から植わっているアイレンのブドウ畑(樹齢90~100年)から造られているのだそう。
 

(*)フィロキセラ禍:フィロキセラ(ぶどう根あぶら虫)という昆虫がブドウ樹にとりつくと5年程度でその樹を枯らせてしまう。この害虫が1860年代より19世紀末にかけてヨーロッパ全土のブドウ畑を壊滅状態にした。

 
 

 こんなに素晴らしいワインなのですが,お値段はというと,…。
 チリワイン並みの1,700円(税別)なのです!
 ちょっとすご過ぎます!
 
 

 合わせる料理は,ズバリ,タイ料理です。ヤムウンセン(春雨のサラダ)からグリーンカレーまでこれ1本でOK。
 
 

 ポップでオシャレなスペイン産オレンジワインです。
 
 

 参考価格:1,700円(税別)

気になるワイン その832020年6月20日(土)

 
Pape-Clement-2nd
 
 

 堂々としたグラーヴの赤に出会いました。♫
 
 

 とりあえず、簡単な説明を。
 

<赤>
 2015 クレマンタン・ド・パプ・クレマン
 2015 Clementin de Pape Clement
 生産地:フランス,ボルドー,グラーヴ地区ペサック・レオニャンAOC
 所有者:ベルナール・マグレ
 品 種:カベルネ・ソーヴィニョン58%,メルロー42%(栽培面積比率)
 

 シャトー・パプ・クレマンは,グラーヴ地区の優良シャトー。1990年代末より醸造コンサルタントにミシェル・ロランを起用し,劇的に品質が向上しています。これはそのセカンドラベル。
 ボルドーの中でもこの地域のワインはスムーズな飲み口のワインが多いです。このワインはそれだけではなく,木樽由来の風味がとても素晴らしく,しっかりとした果実味と相まって気品のある美味しいワインに仕上がっています。
 

 と、まあこんな感じの赤です。
 
 

 何千というシャトーがひしめくボルドーの中でもグラーヴ地区の赤ワインは,あまり馴染みがない方も多いかもしれません。それもそのはずで,スムーズな飲み口のワインが多いので,同じボルドーのメドックやサンテミリオン&ポムロールと比べてあっさりとした印象でイマイチ人気がありません。そうなると結局レストランのワインリストに載ることも少なくなり,さらに飲む機会が減っていくという悪循環です。
 そんなグラ―ヴでも,実は1級格付けのシャトー・オー・ブリオン(*)を始め,シャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン,シャトー・パプ・クレマン,ドメーヌ・ド・シュヴァリエ,シャトー・スミス・オー・ラフィット,…と,なかなか豪華なワインが存在しています。
 

(*)1989年ハリウッド映画『ゴーストバスターズ2』で,主人公のビル・マーレ―とシガニー・ウィーバーがディナーを楽しむシーンに出てましたね。
 

 そのグラーヴのトップクラスのひとつ,シャトー・パプ・クレマンのこれはセカンドラベルです。
 セカンドラベルとは,同一シャトー(ブドウ園)内から収穫されたブドウを使用しファーストラベルの品質には届かないものの十分な品質を持つブドウで造られたワインのことを指します。端的に言ってファーストラベルの弟分のワインです。
 
 

 さっそく抜栓してみましょう。
 色は濃いガーネット。プラム,枯葉,腐葉土,チョコレート,…の美味しそうな香り。
 一口含むと,口当たりはソフト。ミディアムボディの洗練された果実味が口中に広がります。飲み口は例によってスムーズなのですが,決して味わいは薄くはなくオークの風味と合わさって十分な余韻をもたらしてくれます。
 

 一般的に言って,濃厚でインパクトのあるワインはワインジャーナリストの評価点も高くなる傾向があり,それにつられる形で人気も価格も高くなりやすいです。その点でグラーヴ産の赤ワインはテロワール的にはちょっとビミョーですが,このシャトー・パプ・クレマンは,オーナーのベルナール・マグレ氏の号令一下,力強いワインを造り出すべく前世紀より努力しています。この2015ヴィンテージはまさにその姿勢がストレートに反映された素晴らしい1本に仕上がっています。
 
 

 合わせる料理としては,これまた王道のローストビーフでいただきたいと思います。
 
 

 みなさまも、ぜひ。
 
 

 さて、気になるお値段は,…。
 
 

 6,000円(税別)です。
 

 ではでは。

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美酒礼賛 第31回2020年6月9日(火)

 
Capucha-Fossil-Branco
 
 

ポルトガルの貴婦人に出会いました。
 
 

 ポルトガルの白ワインといえば私の知っているものは,若飲みの「ヴィーニョ・ヴェルデ」ぐらいなもので,ほかにどんな白ワインがあるのかさっぱりわかりません。自分の勉強不足を棚に上げてはいけませんが,ポルトガルの赤は何となくイメージが湧いてくるのですが,白は全く?でした。
 
 

 さて、今回取り上げるワインは,
 

 2017 フォッシル・ブランコ(ヴァレ・ダ・カプーシャ)
 2017 Fossil Branco Vale da Capucha
 生産地:ポルトガル,リスボン北部トレシュ・ヴェドラシュ
 生産者:ヴァレ・ダ・カプーシャ
 品 種:フェルナン・ピレシュ50%,アリント35%,カスタス・レジオナイス15%
 
 生産者のヴァレ・ダ・カプーシャについて少し説明を。
 当主のペドロ・マルケシュは,2005年にリスボンの農業専門学校卒業し,ヨーロッパや新世界のワイナリーで働きながら,故郷のトレシュ・ヴェドラシュ(ポルトガルの首都リスボンから北へ30kmのところ)で少しずつ家族の畑を植えなおし,2009年に初めて自身のワインを造りました。2015年にはビオ認証を取得。キンメリジャン土壌(フランス・シャブリ地区で有名)を活かし,酸化防止剤不使用の醸造技法でワイン造りを開始。今まさに羽ばたこうとしている新世代のポルトガルの自然派生産者です。
 
 

 では抜栓してみましょう。
 色は,ややうすいゴールド。香りは,グレープフルーツ,メロン,少しすると枇杷,マンゴーやパイナップルなどの南国のフルーツも。
 一口含むと,最初は酸化防止剤不使用醸造時に特徴的なソーダ水のような辛さを感じますが,少し時間がたつと濃厚な果実味ときちっとした伸びやかな酸が高い次元で調和しているのがわかります。意外にボディもあり,最後はドライに締めくくり,長い余韻となって残ります。

 
 

 これは,まるでポルトガルの貴婦人を想わせる「リッチなシャブリ」です。
 

 実は,ここトレシュ・ヴェドラシュの地層は辛口白ワインの代名詞的存在であるフランスのシャブリ地区の地層と同じキンメリジャン階の石灰岩質だそうです。これは深い海であった時代の貝殻の化石を多く含んでいるのが特徴です。エチケットのアンモナイトの化石の図柄もそこからでてきているのでしょう。ドライなフィニッシュは,まるでシャブリそのものです!
 

 恥ずかしながらフェルナン・ピレシュを始めとする3種のブドウ品種については全く?ですが,ポルトガルは250種を超える独自品種が今でも栽培されているという固有品種のメッカのようなところなのです。
 

 このワインは,独自品種にありがちな変なクセもなく,国際的なワインマーケットにおいてフランスやイタリアの銘醸ワインに比肩しうる一流の品質と個性を持っています。
 
 

 合わせる料理は,夏野菜とエビや貝柱などの魚介類をふんだんにあしらったサラダで決まりです。
 
 

 価格もお手頃。かなりイケてるポルトガルの貴婦人です。
 
 

 参考価格:2,800円(税別)