2020年5月の記事一覧

気になるワイン その822020年5月28日(木)

 
Principiano-La-Romualda
 
 

 傑出した自然派バルベーラに出会いました。♪
 
 

 とりあえず、簡単な説明を。
 

<赤>
 2013 バルベーラ・ダルバ・ラ・ロムアルダ(プリンチピアーノ)
 2013 Barbera d’Alba La Romualda Azienda Vitivinicola Principiano
 生産地:イタリア,ピエモンテ州バルベーラ・ダルバDOC
 生産者:プリンチピアーノ
 品 種:バルベーラ100%
 

 プリンチピアーノ家は1900年代初頭よりブドウ栽培家でした。
 1993年に現当主になり,2004年より栽培・醸造両面において劇的な改革を行いました。
 すなわち有機栽培を実践し,収量を抑え,醸造時には酸化防止剤を添加せず,野生酵母を使用し,温度管理も行いません。
 樽熟成18ヶ月。単一畑ロムアルダからの1本。
 その味わいは,リッチで気品があり,余韻もすばらしいです。
 まさに最上級のバルベーラです!
 

 と、まあこんな感じの赤です。
 
 

 生産者のプリンチピアーノについて少し詳しく。
 現当主のフェルディナンドは1974年モンフォルテ生まれの46歳。アルバ醸造学校を卒業して,1993年よりワイン造りを開始。近代的なワイン造りが全盛の時代だったので,売れっ子のコンサルタントを仰ぎ,回転式発酵,バリック熟成など近代的スタイルのワイン造りを積極的に行っていました。しかし,2003年頃より自身の体が化学物質を受け付けなくなり,2004年より栽培・醸造ともに劇的な改革を行い,完全に自然派に転換。その転向を彼は「自分の個人的な理由である」として,有機認証も申請せず,今後もしない様子。徹底した有機栽培を実践し,収穫量を抑え,醸造時に酸化防止剤を添加せず,野生酵母を使用し,温度管理も行わないという徹底ぶり。
 そんな彼の造る単一畑のバルベーラです。
 
 

 前フリが長くなりました。さっそく抜栓してみましょう。
 色は黒みがかったルビー。カシスやバラなどのアロマに,樽熟成によるバニラやコーヒーの香りも。そしてうれしいことに自然派(酸化防止剤を添加せずに醸造時)特有のあの困りものの還元香は全く感じません。
 一口含むと,濃厚でかつ瑞々しい果実味が口中に広がります。決して重くはなく,おだやかな酸と相まって上品な味わいを形成しています。余韻もたいへん長く,フィニッシュはあくまでもクリーンです。
 

 数年前に2011VT(ヴィンテージ)を試しましたが,そのときは醸造時に酸化防止剤を添加していたため,いわゆるモダンでフルボディーな万人受けするワインでした。それはそれでVERY GOODなワインでした。けれどこの2013VTの気品は何ものにも代えがたいものがあります。
 
 

 まさに,これは傑出したバルベーラOUTSTANDING BARBERAなのです!
 
 
 合わせる料理としては,甘辛い醤油ダレでいただく焼き鳥の「ねぎま」で決まりです。
 
 

 みなさまも、ぜひ。
 
 

 さて、気になるお値段は,…。
 
 

 4,500円(税別)です。
 
 

美酒礼賛 第30回2020年5月24日(日)

 
Von-Wining-Sauvignon-Blanc2
 
 

 愉快なドイツ産ソーヴィニョン・ブランに出会いました。♪

 

 ソーヴィニョン・ブランといえば,まずロワール地方のサンセール,次にボルドー地方のグラーヴ,そしてニュージーランドのマールボロ,…といったところが,高名な産地と言えるのではないでしょうか。グラーヴは第11回でシャトー・ミルボー・ブランを取り上げました。
 
 

 さて、今回取り上げるワインは,
 

 2018 ソーヴィニョン・ブランⅡ(フォン・ウィニング)
 2018 Sauvignon Blanc II Trocken Q.b.A. Von Winning Weingut GmbH
 生産地:ドイツ,ファルツ地方QbA
 生産者:フォン・ウィニング醸造所
 品 種:ソーヴィニョン・ブラン100%(ステンレスタンク熟成8ヶ月)

 

 フォン・ウィニング醸造所について少し説明を。
 19世紀初頭ドイツ南部のファルツ地方で名声を誇った『ジョルダン・エステイト』の後継者レオポルト・フォン・ウィニングが1907年にフォン・ウィニング醸造所を設立しました。彼はワイン造りに高い志を持ち,優良ドイツワイン生産者協会V.D.P.(*)設立の功労者の一人でもありました。その後,第1次および第2次世界大戦におけるドイツの敗戦の影響から抜け出せず,長らく低迷していました。2007年(100周年!)ついに起業家のアヒム・ニーダーベルガーによって再興されました。
 現在ワイナリーでは「畑の可能性を引き出し,最高品質のワインを造る」ことをモットーに,テロワールを重視した環境にやさしいブドウ栽培と人的介入を可能な限り行わないワイン造りを目指しています。
 まさに”FINE WINE”を産み出しているのですね。
 

*)優良ドイツワイン生産者協会V.D.P.(Verband Deutscher Prädikats und Qualitätsweingüter)とは,ドイツにおける上級ワイン造りにおいて主導的役割を果たしている。1910年3月19日設立。2010年5月現在,会員数は196醸造所。総栽培面積は約4900ha,ドイツ全体では約10万haなので約5%。

 
 

 では抜栓してみましょう。
 色は,淡いイエロー。香りは,パッションフルーツ,熟したオレンジなどの南洋系フルーツ!
 一口含むと,凝縮感のある果実味と丸みのある酸とのバランスが良く,やさしい味わいを生み出しています。そしてフィニッシュにはレモングラスのような風味を感じ,ワイン全体を引き締めています。
 

 ソーヴィニョン・ブランといえば,淡いグリーンイエローを呈した青草のアロマが定番ですが,これは淡いイエローとパッションフルーツ! こんな色と香りを持つソーヴィニョン・ブランは,かつてカリフォルニア産で経験したことはありますが,ヨーロッパ産では初めてかもしれません。飲んでいて楽しくなる1本です。ここのブドウ畑のテロワールはよっぽど変わっているのでしょうか!? 飲み手をこんなにハッピーな気分にしてくれるソーヴィニョン・ブランもめずらしいです。
 
 

 本当に愉快なファルツのソーヴィニョン・ブランです。
 
 

 合わせる料理は,パルミジャーノをたっぷりかけたシンプルなリゾットで決まりです。
 
 

 価格もお手頃。かなりうれしい初夏にピッタリな1本です。
 
 

 参考価格:2,500円(税別)

気になるワイン その812020年5月20日(水)

 
Chateau_Chene_Liege
 
 

 超お買得な本物のポムロールに出会いました。♫
 
 

 とりあえず、簡単な説明を。
 

<赤>
 2015 シャトー・シェーヌ・リエージュ
2015 Chateau Chene Liege
 生産地:フランス,ボルドー地方ポムロールAOC
 所有者:ニアルフェックス家
 品 種:メルロー95%,カベルネ・フラン5%
 

 1896年設立の老舗シャトー。40年以上の古木のメルローを使用し,減農薬栽培でていねいに育てられた,小さな畑から年間9000本程度の少量生産。セメントタンクで醗酵。樽熟成24ヶ月。
 ポムロールらしい優美で濃厚なスタイル。
 今飲んでも美味しいですが,10年以上は熟成可能です。
 

 と、まあこんな感じの赤です。

 
 

 ポムロールと聞くと,ボルドーの赤ワインの中でも最も高価なシャトー・ペトリュスを始め,シャトー・ル・パン,ヴュー・シャトー・セルタン,…などなど,とにかくキラ星のごとく輝く名だたるシャトー群がすぐさま思い起こされます。21世紀に入り,これらのシャトーの価格は数万円~数十万円と高騰しています。そんな高級ワイン産地のポムロールで,ポムロールACゾーンの中心地にある,わずか2ヘクタールほどの小さなブドウ園がこのシャトー・シェーヌ・リエージュです。19世紀の終わりに設立された1万本に満たない生産量の家族経営のマイクロ・ワイナリーです。
 
 

 さっそく抜栓してみましょう。
 色は黒みがかったガーネット。プラム,ブラックチェリー,…の黒系果実のアロマ,そしてロースト香の心地よいブーケ。
 一口含むと,口当たりはやさしく,きれいな酸と濃厚な果実味が相まって粘りのあるボディが口中になめらかに広がります。余韻も素晴らしく,オークの風味が長く長く残ります。
 
 

 ところで,ヒュー・ジョンソン,ジャンシス・ロビンソン共著『世界のワイン図鑑』第7版では,メルロー種の説明の中で,「メルローは単一品種としての存在感も持っており,…,ポムロールでその長所を最大限に発揮し,官能的でビロードのようになめらかなエッセンスをもたらす。」と記述されています。
 

 このシェーヌ・リエージュは「官能的でビロードの…」とまではいかないかもしれませんが,そろそろ飲み頃が始まっており,向こう10年はポムロールの快楽を堪能できることでしょう。

 
 

 合わせる料理としては,ここは王道のタンシチューでいただきたいと思います。
 
 

 みなさまも、ぜひ。
 
 

 さて、気になるお値段は,…。
 
 

 5,400円(税別)です。

 
 

 ではでは。

美酒礼賛 第29回2020年5月14日(木)

 
Ferret-Les-Menetrieres
 
 

 今回は,まさにCOOL BEAUTYなプイィ・フュイッセをご紹介します。
 
 

 第29回はブルゴーニュの白です。第1回ではACブルゴーニュ・ブランを第8回ではACコルトン・シャルルマーニュを第15回ではACサン・ヴェラン,そして第25回ではACサヴィニー・レ・ボーヌ1級畑を取り上げました。
 
 

 さて、今回取り上げるワインは,
 

 2016 プイイ・フュイッセ・オール・クラッセ ”レ・メネトリエール”(J.A.フェレ)
2016 Pouilly-Fuisse Hors Classe “Les Menetrieres” domaine J.A.Ferret
 生産地:フランス,ブルゴーニュ地方プイイ・フュイッセAOC
 生産者:J.A.フェレ
 品 種:シャルドネ100%
 

 1840年設立のプイイ・フュイッセ最良の生産者のひとつ。
 2008年ルイ・ジャドが購入し,品質が向上し続けています。
 「オール・クラッセ」とは,フェレの最上級キュヴェの呼称です。
 オーク樽にて醗酵後,そのまま16ヶ月熟成。
 マルメロのアロマにハチミツやトーストの香りが溶けあって複雑な風味を醸し出しています。柔らかな口当たり,濃厚で複雑な味わいを持ち,余韻も長いです。
 プイィ・フュイッセの枠をはるかに超えた最上級のブルゴーニュの白です。
 今飲んでも美味しいですが,20年以上は熟成できるポテンシャルがあります。
 
 

 ドメーヌ・フェレは,1840年創立の由緒あるドメーヌ。ブルゴーニュ南部マコネー地区ACプイィ・フュイッセ最良の生産者のひとりです。このアペラシオンにおいてテロワールごとにワインを瓶詰めし始めた最初の生産者でもあります。2008年よりルイ・ジャド社の傘下に入り,さらなる高みをめざしています。
 
 

 早速、抜栓してみましょう。
 色は,淡いゴールド。香りは,まず青りんご,それから柚子,すだち,レモン,オレンジなどの柑橘系,パイナップル,ハチミツ,ブリオッシュ,ヒノキ,…。さまざまなアロマがさざ波のように上品に拡がっていきます。
 一口含むと,青りんごの酸味と濃厚な果実味のバランスが厚みのあるボディを生み出しています。余韻にはシークアーサーのような風味が長く残ります。しっとりと落ち着きのある味わいを持ちながらボリューム感もあり,かつ清涼感もあります。
 
 

 なんてゴージャスなワインなんでしょう。まさに”COOL BEAUTY”という形容がピッタリとくる傑出した1本です。
 
 

 ワイン評論家のジャスパー・モリスは『ブルゴーニュ大全』の中で「レ・メネトリエールの畑はプイィ・フュイッセの真髄である」と絶賛しています。最良のプイィ・フュイッセがここにあります。

 
 

 参考価格:9,000円(税別)
 

気になるワイン その802020年5月10日(日)

 
Jadot-Beaune-1er-Cru
 
 

 ブルゴーニュの記念碑的なワインに出会いました。♫
 
 
 

 とりあえず、簡単な説明を。
 

<赤>
 2015 ボーヌ・プルミエ・クリュ・オマージュ・オー・クリマ(ルイ・ジャド)
 2015 Beaune 1er Cru Hommage aux Climats domaine Louis Jadot
 生産地:フランス,ブルゴーニュ地方ボーヌ・プルミエ・クリュAOC
 生産者:ルイ・ジャド社
 品 種:ピノ・ノワール100%
 

 ルイ・ジャド社が生まれ育ったボーヌの畑に敬意を表し,優良年である2015年産のボーヌ1級畑のワイン19種をブレンドし,スペシャル・キュヴェを造りました。
 それぞれの畑の個性が見事に調和した,奥深い味わいの1本です。
 

 と、まあこんな感じの赤です。
 
 

 言わずもがなのルイ・ジャド社ですが,復習の意味で今一度このブルゴーニュ屈指の生産者の歴史を振り返ってみましょう。
 1859年にルイ・アンリ・ドゥニ・ジャドによりメゾン設立。ジャド家はそれ以前より由緒あるブドウ栽培家としてすでに有名でした。以降ブルゴーニュの大手ネゴシアンとして,様々なアペラシオンのブドウを買付け醸造・販売してきました。それと同時にブドウ畑も次々に購入し,自社畑のワイン(=ドメーヌ)も造り続けてきました。現在はブルゴーニュに240ha(東京ドーム50個分以上の広さ)もの自社畑を有する一大ドメーヌとなっています。
 また,ルイ・ジャド社はただ単に売れるブルゴーニュワインを造っているのではなく,2011年からは自社畑において環境にやさしい栽培技法を積極的に採り入れ,2019年3月にはHVEのLEVEL3(*)の認定をフランス農業省の認定機関より受けました。真にブルゴーニュのテロワールを大切にした栽培と醸造を心掛けている生産者なのです。
 

*)HVE認証(Haute Valeur Environnementale「高い環境価値」の意)とは,ブドウの栽培から瓶詰めまで適切なアプローチを採用することを選択した農業従事者/ブドウ栽培者に与えられます。この認証は,3つのレベルで優れた環境にやさしい実践を推奨します。LEVEL3は,その最上位のもので,生物多様性の尊重,害虫対策,肥料および灌漑の騒音管理といった指標を基準に認定されます。
 
 

 前フリが長くなりました。さっそく抜栓してみましょう。
 色はルビーそのもの。チェリー,カシス,ストロベリー,シナモン,トリュフ,…などの複雑なアロマ。
 一口含むと,口当たりはやさしく,果実味がほど良いコクとなって口中に広がります。余韻もまずまずです。ですが,現時点では少し酸が高く,ボリューム感の点で物足りなさを感じます。ワインが開いておらず,当たり年の偉大さがまだ隠れているようです。
 まだ若いのですね。本当の飲み頃は2025年ぐらいからでしょうか。今飲むなら,しっかりとデキャンタージュして空気とよくなじませてから楽しんでみたい。
 
 

 合わせる料理としては,鴨のテリーヌがベストかもしれませんが,関西人の私としてはここは「ねぎ焼き」をポン酢醤油でいただきたいと思います。
 
 

 みなさまも、ぜひ。
 
 

 さて、気になるお値段は,…。
 
 

 8,000円(税別)です。
 

 ではでは。