2020年4月の記事一覧

美酒礼賛 第28回2020年4月23日(木)

 
Sacrisassi_Bianco
 
 

 第28回は北イタリア・フリウーリ=ヴェネツィア・ジューリア州産の白です。
 
 

 前回にひきつづき北イタリアの素晴らしい個性を持った1本です。
 

 フリウラーノというブドウ品種は,イタリアの最北東にあるフリウーリ=ヴェネツィア・ジューリア州を中心に北部で栽培されている独自品種です。またリボッラ・ジャッラ種にいたってはフリウーリ=ヴェネツィア・ジューリア州の一部でしか栽培されいません。
 

 さて,今回取り上げるフリウーリ=ヴェネツィア・ジューリアの白は,これら聞きなれない独自品種2種のブレンドのワインです。
 

 2015 フリウーリ・コッリ・オリエンターリ・サクリサッシ・ビアンコ(レ・ドゥエ・テッレ)
 2015 Friuli Colli Orientali “Sacrisassi” Bianco Azienda Agricola Le Due Terre
 生産地:イタリア,フリウーリ=ヴェネツィア・ジューリア州フリウーリ・コッリ・オリエンターリDOC
 生産者:レ・ドゥエ・テッレ
 品 種:フリウラーノ70%,リボッラ・ジャッラ30%
 醸 造:醗酵後,フレンチオークで20ヶ月の樽熟成

 
 

 どんな個性が現れるのでしょうか。抜栓してみましょう。グラスに注がれた液体は,ほんのり赤みさす麦わら色。香りは,アーモンド,梅の花,梅干し,ハチミツ,…。一口含むと,口当たりはソフトで,伸びやかな酸に濃厚な果実味が調和しています。豊かなアーモンドのなかに少し梅干しの風味も。ほんのりスパイシーなニュアンスも感じます。余韻はとても長いです。
 なお,サクリサッシSacrisassiとはイタリア語で「聖なる石」の意味。その由来はワイナリーの場所にかつて古い教会があったことにちなんでいるらしいです。
 

 この色調と味わいから,明らかに酸化防止剤不使用で醸造した,バリバリの自然派ワインということがわかります。
 余談ですが,私がこのワインを初めて試したのは(私の記憶が正しければ)2003年でヴィンテージは2000年だったように思います。当時のサクリサッシは,セパージュ(原料ブドウのブレンド割合)にソーヴィニョン・ブランが含まれており,かつ醸造時に酸化防止剤を使用していたためか,2015VTよりも,色は少し緑がかった麦わら色で,味わいもよりスパイシーさが目立っていたように記憶しています。すなわち現在より明快なスタイルであったように思います。
 

 技術的な違いはともかく,サクリサッシは類いまれな個性を持つ白ワインであることは間違いないのです。

 
 

 さて,このサクリサッシにどんなチーズを合わせましょうか。
 ブリーなどの白カビ全般と相性は良さそうですが,ここは少しひねってフランス・スペイン国境のピレネー山岳地帯のハードタイプの名品オッソー=イラティーなどはいかがでしょうか。羊乳特有の旨みがフリウラーノ種の果実味とピッタリとマッチし「しあわせ」を感じます。
 お料理なら,粗塩をひとふりした地鶏のグリルにガッツリと合わせてみたいです。

 
 

 参考価格:5,700円(税別)
 

気になるワイン その792020年4月15日(水)

 
tetta-MBA-Barrique
 
 

 感動のマスカット・ベイリーAに出会いました。♫
 
 
 

 とりあえず、簡単な説明を。
 

<赤>
 2018 マスカット・ベイリーA樽熟成(ドメーヌ・テッタ)
 2018 Muscat Baily A Barrique domaine tetta
 生産地:日本,岡山県新見市哲多町
 生産者:ドメーヌ・テッタ
 品 種:マスカット・ベイリーA100%
 

 2016年設立の新進気鋭の生産者。
 元々は耕作放棄地だった広大なブドウ畑で2009年よりワイン造り
に挑戦。ブドウ栽培から醸造,熟成,瓶詰めまで全てを行っています。
 樽熟成12ヶ月のマスカット・ベイリーA。
 濃厚な果実味に木樽の風味がとけこんで美味しい赤ワインに。
 今後が楽しみな志の高いワイナリーの情熱溢れる1本。
 

 と、まあこんな感じの赤です。
 
 

 広島の県境に近い岡山県新見市哲多町にある「ドメーヌ・テッタ」は,西日本のワイナリーの中で私が特に評価しているところです。
 何が素晴らしいかといえば,まず土壌が良いのです。フランスの銘醸地に似た石灰岩土壌で水はけ良好。標高(約400m)も高く,1日の気温の寒暖差もあり,ブドウ栽培にピッタリなんです。そんな栽培好適地で可能なかぎり農薬を使用せず,ブドウ樹を大切に育てているのです。
 さらに素晴らしいことに,醸造時には野生酵母で醗酵を行ない,補糖も補酸もしないのです。これは決定的に重要なことです。なぜなら,ファインワインを造る上でテロワールの個性を表現するためには,その畑に棲みついてブドウの果皮に付着している野生の酵母で醗酵させなければ意味がないからです。また補糖と補酸はワインの味を人為的に調整することを意味します。それをしないということで,より収穫された果実本来の姿を表現できるのです。
 このように「ドメーヌ・テッタ」は,真に志を高く持った自然派の生産者なのです!
 

 また,ご存知の方も多いと思いますが,コンクリート打ちっ放しのワイナリーにはカフェが併設されており,美味しいランチとケーキ(もちろんワインも!)が食べられるのです。蛇足ですが,ここのお手洗いがまた素敵なんですね。本当に美しいワイナリーなのです。
 
 

 前フリが長くなりました。さっそく抜栓してみましょう。
 色は濃いガーネット。マスカット・ベイリーAに特有のストロベリーキャンディのアロマを感じ,ほんのり木樽のニュアンスも。
 一口含むと,口当たりはやさしく,濃厚な果実味が圧倒的なボリューム感とともに口中に広がります。素直に美味しいと思えるワインです。余韻はさほど長くはありませんが,これはマスカット・ベイリーAというブドウ品種の限界かもしれません。

 樽熟成のマスカット・ベイリーAはかつてダイヤモンド醸造のものを好んで飲んでいましたが,これはそれに匹敵するかそれ以上の素晴らしい出来栄えです。
 

 ただしサービス温度は少し低めの10~12℃がベスト。温度が上がるとどうしてもマスカット・ベイリーA特有の甘さが目立ってきます。
 合わせる料理としては,醤油ダレの焼鳥が定番ですが,関西人の私としてはここは「お好み焼き」でいきたいと思います。

 
 

 みなさまも、ぜひ。

 
 

 さて、気になるお値段は,…。
 
 

 3,200円(税別)です。
 
 

 ではでは。

美酒礼賛 第27回2020年4月11日(土)

 
Anselmet-Muscat
 
 

 第27回は北イタリア・アオスタ渓谷産のミュスカです。
 
 

 シャルドネ,ソーヴィニョン・ブランにちょっと飽きた方にぜひおすすめしたい1本です。
 

 ミュスカ(マスカットのことです)というブドウ品種は,イタリアではモスカート・ビアンコと呼ばれ,国土のほぼ全域で栽培されています。ピエモンテ州のアスティ・スプマンテやモスカート・ダスティ(どちらも甘口)などが特に有名です。また,北アフリカのチュニジアとシチリア島の間に浮かぶパンテッレリーア島で造られるモスカート・ディ・パンテッレリーアは極上のデザートワインです。

 
 

 さて,今回取り上げるヴァッレ・ダオスタのミュスカは,甘口ではなく辛口仕立てです。
 

 陽春にピッタリな白ワインです。
 

 2018 シャンバーヴ・ミュスカ(アンセルメ)
 2018 Chambave Muscat Maison ANSELMET
 生産地:イタリア,ヴァッレ・ダオスタ州ヴァッレ・ダオスタDOC
 生産者:レナート・アンセルメ
 品 種:ミュスカ(=モスカート・ビアンコ)100%
 醸 造:醗酵後,ステンレスタンクにて3~4ヶ月の熟成

 
 

 ヴァッレ・ダオスタ州はピエモンテ州の州都トリノから北へ80kmほどのところにあるフランス国境にほど近いワイン産地。北はスイス,西はフランスに接しています。イタリアで最も小さい州です。「ミュスカ」というカタカナ表記を見てフランス語圏であることがわかります。イタリア語とフランス語の両方が公用語となっているめずらしい州です。州都アオスタから東へ20kmほどのところにシャンバーヴの村があり,そこで栽培されているミュスカを原料に造られる辛口の白ワインがこの「シャンバーヴ・ミュスカ」なのです。
 
 

 それでは抜栓してみましょう。色は,ほんの少し緑がかった淡いイエロー。香りは,花ではユリ,フルーツではメロンやグレープフルーツ,ハーブではバーベナ,ローズマリー,…。そしてハチミツのような甘いニュアンス。アンセルメ社のホームページではこのワインの香りの表現に”kaleidoscopic”日本語で「万華鏡のような」という形容がされていました。まさに万華鏡のようにさまざまアロマの表情を見せてくれます。
 一口含むと,口当りはやさしく,果実味は濃厚でふくらみがあり,アルザス産ミュスカと比べ残糖分は少なくややドライな印象です。
 

 本当に楽しい白ワインです。
 
 

 アルザスのミュスカはどちらかというと個性が強く飲み手を選ぶ場合が多いですが,このシャンバーヴ・ミュスカは誰からも愛されるフレンドリーな風味を持っています。合わせる料理としては,菜の花のペペロンチーノや塩コショウで食べる串カツなんてのも面白いかもしれません。

 
 

 参考価格:3,200円(税別)

 

気になるワイン その782020年4月8日(水)

 
San_Giusto_A_Renrennano

 
 

 王道のキアンティ・クラッシコに出会いました。

 
 

 とりあえず、簡単な説明を。

 

<赤>
 2017 キアンティ・クラッシコ(サン・ジュスト・ア・レンテンナーノ)
 2017 Chianti Classico Fattoria San Giusto A Rentennano
 生産地:イタリア,トスカーナ州キアンティ・クラッシコDOCG
 生産者:サン・ジュスト・ア・レンテンナーノ
 品 種:サンジョヴェーゼ主体,カナイオーロ
 

 サンジョヴェーゼの傑作『ペルカルロ』を産み出した生産者。
 そんなワイナリーで造られる普通のキアンティ・クラッシコ。
 それでも品格を感じます。
 豊かな果実味と優雅な酸味をあわせ持つ逸品。
 とても素直でやさしい味わいのキアンティ・クラッシコです。

 

 と、まあこんな感じの赤です。

 
 
 

 中世の農園サン・ジュスト・ア・レンテンナーノは1914年に婚姻を通じてマルティーニ・ディ・ツィガーラ家の所有となりました。現在はアナ,ルチア,エリザベッタ,フランチェスコ,アレッサンドロとルカが共同で農園の経営にあたっています。またここの農園はすべて有機栽培を実践しています。

 

 この名高きキアンティ・クラッシコを最初に飲んだのは(私の記憶が正しければ)2000年で1998ヴィンテージ(以下VTと略します)だったと思います。それから2000VTまで購入し,それ以降は試していませんでした。それから月日は経ち,昨年(2019年)より株式会社ラシーヌの取扱いとなったため,2016VTを7年ぶりに購入しました。そして今年はこの2017VTです。
 
 

 前フリが長くなりました。さっそく抜栓してみましょう。
 色は赤みの強いルビー。カシスやチェリーなどのフルーツのアロマに,黒糖やインクの香りも。
 一口含むと,ほど良い果実の旨味をキアンティ特有のしっかりした酸が支え,プルーンや赤紫蘇の心地よい風味が余韻に残ります。巷にあふれる酸っぱいだけのキアンティとは全く違い,酸と果実味が高い次元で調和しています。
 
 

 2000年頃に飲んだときの方が果実味はより濃厚な印象でしたが,今は良い意味で軽くなり素晴らしく食事に合わせやすいワインとなっています。
 
 

 まさに王道のキアンティ・クラッシコです。
 
 

 みなさまも、ぜひ。
 
 

 さて、気になるお値段は,…。
 
 

 3,800円(税別)です。
 
 

 ではでは。