2016年9月の記事一覧

9月25日ハドソン川の奇跡2016年9月25日(日)

 
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 2年ぶりのイーストウッド監督の新作です。
 前作2014年『アメリカン・スナイパー』もそうでしたが、苦悩する英雄が本作の主人公です。
 

 2009年1月15日に実際に起きたUSエアウェイズ1549便のニューヨークを流れるハドソン川不時着水事故およびその後の実話を忠実に再現した物語です。
 

 以下ネタバレ注意!
 
 

 「ハドソン川の奇跡」を成し遂げた英雄、チェスリー・サリー・サレンバーガー機長のその後の物語です。
 わたしは知らなかったのですが、その直後にサレンバーガー機長は国家運輸安全委員会により不時着水は乗客を命の危険にさらす無謀な判断ではなかったのか?という追及がなされ、賞賛から一転して容疑者となり、「無罪」を勝ち取るまでの法廷劇と言えるものです。
 
 

 主人公のトム・ハンクスは1995年のロン・ハワード作品『アポロ13』で宇宙船の船長を演じていました。『アポロ13』では宇宙空間での事故発生から地球へ無事生還するまでの物語でした。『アポロ13』と同様に通常の映画作りからすれば、155名の乗員・乗客が「不時着水」という無謀な操縦(?)でいかに無事に全員生還できたのか? という流れで、ストーリーが展開し最後はハッピーエンドになり、観客は高揚した気分のまま映画館を出ることになるのですが、イーストウッドの作品ではそうは問屋がおろしません。
 

 とにかく映画の中でトム・ハンクスの表情は苦悩に満ちています。ほとんど笑うことがありません。PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされ、なかなか眠れません。最後の国家運輸安全委員会の公聴会のシーンで無実が証明され、副操縦士のジョークで初めて笑顔をみせるのです。
 

 ということは、この映画は主人公のサリー機長が、不時着水後の様々な苦悩から解放され笑顔になるまでの物語と言えそうです。
 
 

 なかでも私のお気に入りのシーンは、ハドソン川に無事着水し乗客が全員救命ボートに乗り移ったのを慎重に確認した後、コックピットに入り制服のジャケットとフライトプラン(?)のボードを取って、最後にボートに乗り移るシーンです。サリー機長の真にプロフェッショナルな行動に感銘を受けました。

 
 

 さて、このサリー機長、トム・ハンクスそしてイーストウッド監督とともに祝杯をあげるのなら、
 精緻なブラン・ド・ブランを造ることで定評のあるドワイヤールの2007年ブラン・ド・ブラン・グラン・クリュ(詳しくは→コチラ)を飲みたいものです。

 
 
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 ではでは。

 

 

美酒礼賛 第15回2016年9月24日(土)

 
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 第15回はブルゴーニュの白です。第1回ではACブルゴーニュ・ブランを第8回ではACコルトン・シャルルマーニュを取り上げました。AOCの格付けからいって最もお手頃のものからブルゴーニュ(というより世界の)白ワインを代表する特級畑までという両極端のセレクションでしたが、今回はちょっとお手頃な白ワインを取り上げます。
 
 

 シャルドネについて、いまさら説明は不要だと思いますが、ちょっとおさらいを。
 ブルゴーニュ原産の白ブドウ品種で、世界中のワイン産地で栽培されています。樽醗酵、樽熟成によくなじみ、古今東西の白の銘酒はほとんどがシャルドネです。シャンパーニュにも用いられ、シャルドネ単一で醸されるものは「ブラン・ド・ブラン」と呼ばれ、高級シャンパーニュの代名詞的存在です。
 
 

 さて、今回取り上げるワインは、
 

 2014 サン・ヴェラン・レ・ポマール(ダニエル・バロー)
 生産地:フランス,ブルゴーニュ地方サン・ヴェランAOC
 生産者:ダニエル・バロー
 品 種:シャルドネ100%

 

 1890年頃にこの地に来たバロー家は現在で4代目。現当主のダニエル・バローは、ブルゴーニュ南部マコネ地区を代表する生産者です。
 ACサン・ヴェランはブルゴーニュ南部マコネー地区の南にある8ヶ村で産する辛口白ワインの総称。フルーティーで軽やかなワインが多いなか,このバローのものは別格のコクと旨味を持っています。そんなバローの所有する畑の中でもこの「レ・ポマール」は信じがたい品質を維持しています。

 
 
 

 抜栓してみると、グレープフルーツやピーチのアロマを感じ、そしてバニラの風味が心地よくつづきます。一口含むと、口当りはソフトで、典型的なシャルドネのボリュームを感じ、それが長くつづきます。たいへん伸びやかなワインです。濃厚でありながらも、やさしい味わいです。余韻も驚くほど長く、最後に鉱物的なニュアンスが残ります。
 標準的なムルソーなどこのサン・ヴェランの前では、沈黙するしかないでしょう!
 
 

 ダニエル・バローのワインは1996ヴィンテージ頃から飲んでいますが、かわらず高品質なシャルドネを造り続けておられるのが、栄枯盛衰のはげしいブルゴーニュにおいてうれしい限りです。
 
 

 ブルゴーニュの白の有名アペラシオン、ムルソー、ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェなどの近年の価格の高騰ぶりには辟易としていますが、サン・ヴェランというコート・ドール(黄金の丘)地域ではない、お手頃価格なアペラシオンでACムルソーなどぶっ飛んでしまうようなワインがあることにブルゴーニュの良心を感じます。

 
 

 参考価格:4,600円(税別)

 
 

 ご用命は→コチラまで。

9月22日ラトゥールの3rdラベル!2016年9月22日(木)

 
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最近入荷してきたシャトー・ラトゥールのサードラベルの
キャップシールにこんなシールがついていました。
 

なんと! 偽造防止ののためのシールだそうです。
 
 

ワインも偽物があるんですよ。
あのロマネ・コンティだって一説には生産量の5倍の量が流通していると言われています。
 
 

ワインの偽物は昔から当たり前のようにあったので、
店長も若いころにコルクの刻印が違う(偽物)なんて経験があるようです。
 

インターネットで空瓶が売買されているのも、そんな関係もあるらしいです!?
 
 

世界中で評価されている高価なワインが安いわけがありません。
 

エルメスのケリーバッグが半額で売っていたら「怪しい…」と思いませんか?
ワインだって同じです!
サードラベルでさえ偽造防止をするのです。
いかにボルドー5大シャトーの偽物が多いかということです。
 
 

本物の「ル・ポイヤック・ド・ラトゥール」のご注文は→コチラ

 
 
ではでは。

気になるワイン その612016年9月19日(月)

 
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 ピエモンテの気品あるバルベーラに出会いました♫
 
 

 高品質なバルベーラは世界的に人気です。ゆえに価格も確実に上昇傾向にあります。
 そんな中でこのバルベーラは、…!
 
 

 とりあえず、簡単な説明を。
 

<赤>
 NV(2012)ロッソ・ラシーヌ(トリンケロ)
NV(2012)Rosso Racines Azienda Agricola Trinchero
 生産地:イタリア,ピエモンテ州VdT(本来ならばバルベーラ・ダスティDOCG)
 生産者:トリンケロ社
 品 種:バルベーラ100%
 

 1952年よりバルベーラ・ダスティを造っている優良な生産者です。
 若い樹齢のワインはすべて桶売りにしてしまい,「トリンケロ」
のブランドで出荷するワインにはたいへんなプライドを賭け,平均
樹齢20年以上のぶどうのみで造られています。
 フレッシュな酸と凝縮度の高いエキス分を持ち,素直な美味しさ
を実感できる1本です。
 醸造時酸化防止剤不使用の株式会社ラシーヌ専用キュヴェ!
 
 

 と,まあこんな感じです。

 
 
 

 バローロの原料ブドウであるネッビオーロの赤は、そのブルゴーニュ的な気難しさゆえに好き嫌いがでるワインです。その点バルベーラの赤は、万人受けする果実味の親しみやすさがあります。

 
 

 抜栓してみると…。
 色は濃い赤紫。カシス、チェリーなどのアロマ。一口含むと、落ち着いた感覚があり、濃厚な果実味と気高い酸味とのバランスが素晴らしいです。余韻も長く、飽きのこない味わいです。もちろんグリルした鶏や豚との相性はバツグンで、いくらでも杯がすすみます。

 

 このワインは、ワイン輸入商社の株式会社ラシーヌ専用キュヴェで、特別に3年間のタンク熟成の後に瓶詰め、出荷されます。十分な熟成の後出荷されるため、リリース直後から上品な味わいが楽しめます。ただ無いものねだりですが、今までのヴィンテージでは上品すぎて何か物足りなさを感じておりました。ご存知の通り2012年はピエモンテの最優良年で、その分よりスケール感のあるワインになっています。ある意味傑出したワインと言っても過言ではないと思います。

 

 なお、このワインのワイン法上の規格はヴィーノ・ダ・ターボラ(テーブルワイン)という最下級のものですが、本来は「バルベーラ・ダスティDOCG」としてリリースされるべきものです。日本酒でもかつて(1980年代)「無鑑査酒」といって、純米吟醸酒などを意図的に等級の審査を省いて2級酒の規格で販売し酒税を節約し、結果、小売価格を安く抑えてていたものがありました。このワインも同様にあえてヴィーノ・ダ・ターボラの規格で販売することにより、価格を抑えているのです。そのためヴィンテージ表記ができないので(ワイン法上ヴィンテージの表示が認められていない)、エチケットの左下すみに”L12″という記号で代用しています。
 
 
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 このワインもまた驚くべきコストパフォーマンスを持っています!

 
 

 みなさまも,ぜひ。
 
 

 さて,気になるお値段は…。

 

 2,700円(税別)です。
 
 

 ご用命は→コチラ
 
 

 ではでは。