
2015/ 8/13 13:01
真実のメドックに出会いました。
とりあえず、簡単な説明を。
<赤>
2009 グラン・ヴァン(グレネリー)
2009 Grand Vin GLENELLY
生産地:南アフリカ,WOステレンボッシュ
生産者:グレネリー社
品 種:シラーズ42%,カベルネ・ソーヴィニョン40%,メルロー14%,
プティ・ヴェルドー4%
ボルドーのメドック2級格付けシャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランドの元オーナー、メイ・エレーヌ・ド・ランクザン夫人が2003年に購入。
ボルドーブレンドにこだわらず、南アフリカお得意のシラーズを中心に配した素晴らしい1本。
フレンチオークにて18ヶ月の熟成。
将来が楽しみな南アフリカ、ステレンボッシュの赤です。
と、まあこんな感じです。
ところで、南アフリカのステレンボッシュ産の赤ワインなのに、なぜ「真実のメドック」なのか? という疑問をお持ちの方が多いと思います。 その疑問にお答えする前にグレネリー社の歴史を簡単に見ていきましょう。
1988年 メイ・エレーヌ・ド・ランクザン夫人は、ボルドー使節団として初めて南アフリカの銘醸地ケープ地方を訪れ、その潜在力の高さに強い感銘を受ける。
2003年 ランクザン夫人がステレンボッシュのイーダス・ヴァレーにある123haもある広大なグレネリー農園を購入。
2004年 綿密な土壌分析の結果、60haにカベルネ・ソーヴィニョン、シラー、メルローなどを植える。
2006年 環境にやさしい重力フローシステムを採用した醸造所の建設開始。
2007年 ランクザン夫人は、メドックのシャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランドをシャンパーニュのロデレール社に売却。
2007年 初めて自社農園から原料ブドウを調達。周辺農園からのブドウの購入を徐々に減らしていく。
2009年 新しい醸造所が完成。
現在が2015年ですので、わずか12年の歴史しかないんですね。
では、この2009年産グレネリーを抜栓してみましょう。
カシスやブラックベリーなどの黒い果実のアロマ。樹皮などの木樽熟成によるブーケ。かぐわしいこれらの香りだけでもうすでにメドックしています。一口含むと、まずしっかりとしたタンニンを感じ、次に酸味と果実の旨味がやってきます。余韻も長く、香ばしい木樽の風味が残ります。まだ少し若いですが、来年には本格的な飲み頃になり、それから10年間は私たちを楽しませてくれそうです。素晴らしいメドックいや違ったステレンボッシュの赤です。
メドックの格付けでいえば、5級シャトーに匹敵しそうな勢いがあります。
ランクザン夫人は、このワインを造るにあたって、おそらく以下のように考えておられるのではないでしょうか。
ボルドーという世界のワインビジネスの中心において、ワインジャーナリズムの評価に一喜一憂しながらワインを造るのではなく、ステレンボッシュという新天地で自分の思うとおりに伝統的なメドックのワインを造りたい。すなわち低農薬でブドウを栽培し、収量は低く抑え(グレネリーは31hl/ha。シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランドは平均45hl/ha。ちなみにメドックのワイン法による基本収量は50hl/ha。)、醸造は野生酵母で行い、可能な限り人的介入をしないでワインを育てる、ということです。
つまり、戦前のメドックのワイン造りに回帰しようということなのではないでしょうか。
今のメドックは、ワイン評論家から高得点をひきだすために(すなわち「売れるワイン」を造るために)、コンピュータ制御のハイテクに依存したワイン造りが当たり前になっています。そういうワイン造りに彼女は飽きたのですね。
ですが、ボルドーファンにとってこのワインのセパージュ(ブレンド比率)は多分許しがたいものかもしれません。シラーズ(=シラー)が42%も使用されているので、これは「メドック」ではない。「メドック」とは、カベルネ・ソーヴィニョンとメルローのブレンドでなければならないと。1935年にフランスのワイン法(AOC:原産地統制名称法)が制定されました。実はそれ以前のメドックでは、ワインの味わいに豊かさを出すためにシラーをブレンドするのは当たり前だったそうです。
ということは、グレネリーは、歴史的な意味合いにおいても「真実のメドックワイン」にほかならないのです!

2015/ 8/13 13:02
1925年生まれのランクザン夫人は、今年で満90歳。まだまだ彼女の挑戦は続きます。
みなさまも、ぜひ。
さて、気になるお値段は,…。
2,700円(税込)です。
ではでは。