美酒礼賛

美酒礼賛 第30回2020年5月24日(日)

 
Von-Wining-Sauvignon-Blanc2
 
 

 愉快なドイツ産ソーヴィニョン・ブランに出会いました。♪

 

 ソーヴィニョン・ブランといえば,まずロワール地方のサンセール,次にボルドー地方のグラーヴ,そしてニュージーランドのマールボロ,…といったところが,高名な産地と言えるのではないでしょうか。グラーヴは第11回でシャトー・ミルボー・ブランを取り上げました。
 
 

 さて、今回取り上げるワインは,
 

 2018 ソーヴィニョン・ブランⅡ(フォン・ウィニング)
 2018 Sauvignon Blanc II Trocken Q.b.A. Von Winning Weingut GmbH
 生産地:ドイツ,ファルツ地方QbA
 生産者:フォン・ウィニング醸造所
 品 種:ソーヴィニョン・ブラン100%(ステンレスタンク熟成8ヶ月)

 

 フォン・ウィニング醸造所について少し説明を。
 19世紀初頭ドイツ南部のファルツ地方で名声を誇った『ジョルダン・エステイト』の後継者レオポルト・フォン・ウィニングが1907年にフォン・ウィニング醸造所を設立しました。彼はワイン造りに高い志を持ち,優良ドイツワイン生産者協会V.D.P.(*)設立の功労者の一人でもありました。その後,第1次および第2次世界大戦におけるドイツの敗戦の影響から抜け出せず,長らく低迷していました。2007年(100周年!)ついに起業家のアヒム・ニーダーベルガーによって再興されました。
 現在ワイナリーでは「畑の可能性を引き出し,最高品質のワインを造る」ことをモットーに,テロワールを重視した環境にやさしいブドウ栽培と人的介入を可能な限り行わないワイン造りを目指しています。
 まさに”FINE WINE”を産み出しているのですね。
 

*)優良ドイツワイン生産者協会V.D.P.(Verband Deutscher Prädikats und Qualitätsweingüter)とは,ドイツにおける上級ワイン造りにおいて主導的役割を果たしている。1910年3月19日設立。2010年5月現在,会員数は196醸造所。総栽培面積は約4900ha,ドイツ全体では約10万haなので約5%。

 
 

 では抜栓してみましょう。
 色は,淡いイエロー。香りは,パッションフルーツ,熟したオレンジなどの南洋系フルーツ!
 一口含むと,凝縮感のある果実味と丸みのある酸とのバランスが良く,やさしい味わいを生み出しています。そしてフィニッシュにはレモングラスのような風味を感じ,ワイン全体を引き締めています。
 

 ソーヴィニョン・ブランといえば,淡いグリーンイエローを呈した青草のアロマが定番ですが,これは淡いイエローとパッションフルーツ! こんな色と香りを持つソーヴィニョン・ブランは,かつてカリフォルニア産で経験したことはありますが,ヨーロッパ産では初めてかもしれません。飲んでいて楽しくなる1本です。ここのブドウ畑のテロワールはよっぽど変わっているのでしょうか!? 飲み手をこんなにハッピーな気分にしてくれるソーヴィニョン・ブランもめずらしいです。
 
 

 本当に愉快なファルツのソーヴィニョン・ブランです。
 
 

 合わせる料理は,パルミジャーノをたっぷりかけたシンプルなリゾットで決まりです。
 
 

 価格もお手頃。かなりうれしい初夏にピッタリな1本です。
 
 

 参考価格:2,500円(税別)

美酒礼賛 第29回2020年5月14日(木)

 
Ferret-Les-Menetrieres
 
 

 今回は,まさにCOOL BEAUTYなプイィ・フュイッセをご紹介します。
 
 

 第29回はブルゴーニュの白です。第1回ではACブルゴーニュ・ブランを第8回ではACコルトン・シャルルマーニュを第15回ではACサン・ヴェラン,そして第25回ではACサヴィニー・レ・ボーヌ1級畑を取り上げました。
 
 

 さて、今回取り上げるワインは,
 

 2016 プイイ・フュイッセ・オール・クラッセ ”レ・メネトリエール”(J.A.フェレ)
2016 Pouilly-Fuisse Hors Classe “Les Menetrieres” domaine J.A.Ferret
 生産地:フランス,ブルゴーニュ地方プイイ・フュイッセAOC
 生産者:J.A.フェレ
 品 種:シャルドネ100%
 

 1840年設立のプイイ・フュイッセ最良の生産者のひとつ。
 2008年ルイ・ジャドが購入し,品質が向上し続けています。
 「オール・クラッセ」とは,フェレの最上級キュヴェの呼称です。
 オーク樽にて醗酵後,そのまま16ヶ月熟成。
 マルメロのアロマにハチミツやトーストの香りが溶けあって複雑な風味を醸し出しています。柔らかな口当たり,濃厚で複雑な味わいを持ち,余韻も長いです。
 プイィ・フュイッセの枠をはるかに超えた最上級のブルゴーニュの白です。
 今飲んでも美味しいですが,20年以上は熟成できるポテンシャルがあります。
 
 

 ドメーヌ・フェレは,1840年創立の由緒あるドメーヌ。ブルゴーニュ南部マコネー地区ACプイィ・フュイッセ最良の生産者のひとりです。このアペラシオンにおいてテロワールごとにワインを瓶詰めし始めた最初の生産者でもあります。2008年よりルイ・ジャド社の傘下に入り,さらなる高みをめざしています。
 
 

 早速、抜栓してみましょう。
 色は,淡いゴールド。香りは,まず青りんご,それから柚子,すだち,レモン,オレンジなどの柑橘系,パイナップル,ハチミツ,ブリオッシュ,ヒノキ,…。さまざまなアロマがさざ波のように上品に拡がっていきます。
 一口含むと,青りんごの酸味と濃厚な果実味のバランスが厚みのあるボディを生み出しています。余韻にはシークアーサーのような風味が長く残ります。しっとりと落ち着きのある味わいを持ちながらボリューム感もあり,かつ清涼感もあります。
 
 

 なんてゴージャスなワインなんでしょう。まさに”COOL BEAUTY”という形容がピッタリとくる傑出した1本です。
 
 

 ワイン評論家のジャスパー・モリスは『ブルゴーニュ大全』の中で「レ・メネトリエールの畑はプイィ・フュイッセの真髄である」と絶賛しています。最良のプイィ・フュイッセがここにあります。

 
 

 参考価格:9,000円(税別)
 

美酒礼賛 第28回2020年4月23日(木)

 
Sacrisassi_Bianco
 
 

 第28回は北イタリア・フリウーリ=ヴェネツィア・ジューリア州産の白です。
 
 

 前回にひきつづき北イタリアの素晴らしい個性を持った1本です。
 

 フリウラーノというブドウ品種は,イタリアの最北東にあるフリウーリ=ヴェネツィア・ジューリア州を中心に北部で栽培されている独自品種です。またリボッラ・ジャッラ種にいたってはフリウーリ=ヴェネツィア・ジューリア州の一部でしか栽培されいません。
 

 さて,今回取り上げるフリウーリ=ヴェネツィア・ジューリアの白は,これら聞きなれない独自品種2種のブレンドのワインです。
 

 2015 フリウーリ・コッリ・オリエンターリ・サクリサッシ・ビアンコ(レ・ドゥエ・テッレ)
 2015 Friuli Colli Orientali “Sacrisassi” Bianco Azienda Agricola Le Due Terre
 生産地:イタリア,フリウーリ=ヴェネツィア・ジューリア州フリウーリ・コッリ・オリエンターリDOC
 生産者:レ・ドゥエ・テッレ
 品 種:フリウラーノ70%,リボッラ・ジャッラ30%
 醸 造:醗酵後,フレンチオークで20ヶ月の樽熟成

 
 

 どんな個性が現れるのでしょうか。抜栓してみましょう。グラスに注がれた液体は,ほんのり赤みさす麦わら色。香りは,アーモンド,梅の花,梅干し,ハチミツ,…。一口含むと,口当たりはソフトで,伸びやかな酸に濃厚な果実味が調和しています。豊かなアーモンドのなかに少し梅干しの風味も。ほんのりスパイシーなニュアンスも感じます。余韻はとても長いです。
 なお,サクリサッシSacrisassiとはイタリア語で「聖なる石」の意味。その由来はワイナリーの場所にかつて古い教会があったことにちなんでいるらしいです。
 

 この色調と味わいから,明らかに酸化防止剤不使用で醸造した,バリバリの自然派ワインということがわかります。
 余談ですが,私がこのワインを初めて試したのは(私の記憶が正しければ)2003年でヴィンテージは2000年だったように思います。当時のサクリサッシは,セパージュ(原料ブドウのブレンド割合)にソーヴィニョン・ブランが含まれており,かつ醸造時に酸化防止剤を使用していたためか,2015VTよりも,色は少し緑がかった麦わら色で,味わいもよりスパイシーさが目立っていたように記憶しています。すなわち現在より明快なスタイルであったように思います。
 

 技術的な違いはともかく,サクリサッシは類いまれな個性を持つ白ワインであることは間違いないのです。

 
 

 さて,このサクリサッシにどんなチーズを合わせましょうか。
 ブリーなどの白カビ全般と相性は良さそうですが,ここは少しひねってフランス・スペイン国境のピレネー山岳地帯のハードタイプの名品オッソー=イラティーなどはいかがでしょうか。羊乳特有の旨みがフリウラーノ種の果実味とピッタリとマッチし「しあわせ」を感じます。
 お料理なら,粗塩をひとふりした地鶏のグリルにガッツリと合わせてみたいです。

 
 

 参考価格:5,700円(税別)
 

美酒礼賛 第27回2020年4月11日(土)

 
Anselmet-Muscat
 
 

 第27回は北イタリア・アオスタ渓谷産のミュスカです。
 
 

 シャルドネ,ソーヴィニョン・ブランにちょっと飽きた方にぜひおすすめしたい1本です。
 

 ミュスカ(マスカットのことです)というブドウ品種は,イタリアではモスカート・ビアンコと呼ばれ,国土のほぼ全域で栽培されています。ピエモンテ州のアスティ・スプマンテやモスカート・ダスティ(どちらも甘口)などが特に有名です。また,北アフリカのチュニジアとシチリア島の間に浮かぶパンテッレリーア島で造られるモスカート・ディ・パンテッレリーアは極上のデザートワインです。

 
 

 さて,今回取り上げるヴァッレ・ダオスタのミュスカは,甘口ではなく辛口仕立てです。
 

 陽春にピッタリな白ワインです。
 

 2018 シャンバーヴ・ミュスカ(アンセルメ)
 2018 Chambave Muscat Maison ANSELMET
 生産地:イタリア,ヴァッレ・ダオスタ州ヴァッレ・ダオスタDOC
 生産者:レナート・アンセルメ
 品 種:ミュスカ(=モスカート・ビアンコ)100%
 醸 造:醗酵後,ステンレスタンクにて3~4ヶ月の熟成

 
 

 ヴァッレ・ダオスタ州はピエモンテ州の州都トリノから北へ80kmほどのところにあるフランス国境にほど近いワイン産地。北はスイス,西はフランスに接しています。イタリアで最も小さい州です。「ミュスカ」というカタカナ表記を見てフランス語圏であることがわかります。イタリア語とフランス語の両方が公用語となっているめずらしい州です。州都アオスタから東へ20kmほどのところにシャンバーヴの村があり,そこで栽培されているミュスカを原料に造られる辛口の白ワインがこの「シャンバーヴ・ミュスカ」なのです。
 
 

 それでは抜栓してみましょう。色は,ほんの少し緑がかった淡いイエロー。香りは,花ではユリ,フルーツではメロンやグレープフルーツ,ハーブではバーベナ,ローズマリー,…。そしてハチミツのような甘いニュアンス。アンセルメ社のホームページではこのワインの香りの表現に”kaleidoscopic”日本語で「万華鏡のような」という形容がされていました。まさに万華鏡のようにさまざまアロマの表情を見せてくれます。
 一口含むと,口当りはやさしく,果実味は濃厚でふくらみがあり,アルザス産ミュスカと比べ残糖分は少なくややドライな印象です。
 

 本当に楽しい白ワインです。
 
 

 アルザスのミュスカはどちらかというと個性が強く飲み手を選ぶ場合が多いですが,このシャンバーヴ・ミュスカは誰からも愛されるフレンドリーな風味を持っています。合わせる料理としては,菜の花のペペロンチーノや塩コショウで食べる串カツなんてのも面白いかもしれません。

 
 

 参考価格:3,200円(税別)

 

美酒礼賛 第26回2019年8月12日(月)

 
Van Volxem_Sekt
 
 

 第26回はドイツ産スパークリングワインのゼクトです。
 
 

 まずはゼクトについておさらいを。
 最もお手頃なシャウムヴァインに始まり,ゼクト,ドイチャー・ゼクト,ドイチャー・ゼクトb.A.の4段階の等級に分かれています。
 
 

 さて、今回取り上げるゼクトは,
 

 2011 ゼクト1900・ブリュット・リースリング(ファン・フォルクセン)
 2011 Sekt 1900 Brut Riesling Q.b.A. weingut Van Volxem
 生産者:ファン・フォルクセン
 品 種:リースリング100%
 醸 造:一次発酵は,野生酵母による木樽醗酵。瓶内二次醗酵後,澱とともに5年間セラーにて保管。
 
 

 このゼクトは文句なしのトップランクの「ドイチャー・ゼクトb.A.」です。その中でも特別なヴィンツァー・ゼクトWinzersekt(醸造所のゼクト)※です。
 

※)個々の醸造所や協同組合が生産したぶどうから造られたベースワインのみを使用し,伝統製法によって造られるゼクト。ゼクトb.A.の条件を満たしており,デゴルジュマンまで最低9ヶ月間酵母の澱と一緒に熟成させる。より高品質のゼクトを生産するため,デゴルジュマンまで数年にわたって熟成させる生産者も。エチケットには醸造所,品種,ヴィンテージの表記が義務付けられている。
 
 

 ファン・フォルクセンといえば,19世紀末から20世紀初頭にかけてのモーゼルワイン全盛期(当時のリースリングは辛口!)のワインを21世紀の現代に復活させるべく邁進している傑出した生産者です。優良なリースリングのクローンを使用して収量を抑制し,野生酵母で醗酵させるという,まさにモーゼルのファインワインを造り続けています。今では,同産地の伝説的な生産者であるエゴン・ミュラー家と比肩しうる存在になりつつあります。
 
 

 ところで,一般的なゼクトといえば,心地よい酸味を持つすっきりとした,食前酒にピッタリな辛口のスパークリングといった感じでしょう。
 

 さて,このゼクトはどうなのでしょうか。
 早速、抜栓してみましょう。
 色はゴールドそのもの。繊細な泡にマンゴー,枇杷(びわ),ピーチなどの美しいアロマ。一口含むと,口当たりはやさしく,しっかりとしたボディを持ち,濃厚なフルーツの味わいが辛口でありながらほとんど辛さを感じさせません。アフターにはマンゴーのフレーバーが長く長く続きます。
 
 

 驚愕のゼクトです!
 こんなにすごいゼクトは,いまだかつて経験したことがありません。シャンパーニュでさえもこれほど伝統的な味わいを持つものは,クリュッグやボランジェなどほんの一握りしか存在しないのではないでしょうか。
 
 

 なお,ラベルに書かれている「1900」とは,1900年頃(100年以上前!)に植樹されたリースリングが一部使用されているからだそうです。
 本当にすごいですね!
 
 

 参考価格:5,500円(税別)
 

美酒礼賛 第25回2019年6月18日(火)

 
Savigny-Clos-des-Guettes
 
 

 第25回はブルゴーニュの白です。第1回ではACブルゴーニュ・ブランを第8回ではACコルトン・シャルルマーニュを第15回ではACサン・ヴェラン取り上げました。さて今回は,…。
 サヴィニー・レ・ボーヌの1級畑の白?です。
 
 

 シャルドネについて、いまさら説明は不要だと思いますが、ちょっとおさらいを。
 ブルゴーニュ原産の白ブドウ品種で、世界中のワイン産地で栽培されています。樽醗酵、樽熟成によくなじみ、古今東西の白の銘酒はほとんどがシャルドネです。シャンパーニュにも用いられ、シャルドネ単一で醸されるものは「ブラン・ド・ブラン」と呼ばれ、高級シャンパーニュの代名詞的存在です。
 
 

 さて、今回取り上げるワインは、
 

 2016 サヴィニー・レ・ボーヌ1級畑クロ・デ・ゲット(ルイ・ジャド)
 2016 Savigny-Les-Beaune 1er Cru Clos des Guettes domaine Gagey
 生産地:フランス,ブルゴーニュ地方サヴィニー・レ・ボーヌ・プルミエ・クリュAOC
 生産者:ルイ・ジャド社
 品 種:シャルドネ100%
 栽 培:ビオディナミ農法
 醸 造:野生酵母で醗酵後、16ヶ月の樽熟成

 

 サヴィニー・レ・ボーヌはペルナン・ヴェルジュレスとボーヌの間に位置しています。ペルナン・ヴェルジュレス側にその『クロ・デ・ゲット』の畑はあります。そこにルイ・ジャド社の経営者一族のガジェ家が1区画を所有しています。すなわちルイ・ジャド社のドメーヌ物(自社畑&自社醸造)のワインです。サヴィニー・レ・ボーヌといえば、圧倒的にピノ・ノワールの赤が有名ですが白もわずかですが造られているのです。そして、この区画ではシャルドネがビオディナミ農法で栽培されいます。
 

 ブルゴーニュ最強のネゴシアン兼ドメーヌであるルイ・ジャド社の説明は特に必要ないと思いますが、少しだけ。
 1859年に由緒あるブドウ栽培家のルイ・アンリ・ドゥニ・ジャドによって設立され、以降ネゴシアンとしてはもちろん、現在ではブルゴーニュに240ha以上のブドウ畑を所有するブルゴーニュ有数の大ドメーヌです。また近年はより自然な栽培を志向し、より健全な果実の収穫をめざしています。
 

 一般的なサヴィニー・レ・ボーヌの赤は、どちらかと言うと濃厚でしっかりした…という形容ではなく、柳腰のエレガントなワインが多いのですが、この白はどうなのでしょうか?
 

 早速、抜栓してみましょう。
 アップル、パイナップル、熟したメロンなどの美味しそうなアロマ。そしてヨーグルトやバニラの風味も。
 一口含むと、最初にグレープフルーツや青りんごなどの苦味や酸味を感じますが、しばらくするとそれがオレンジや焼きりんごに変化し、さらにはハチミツや昆布出しなどの甘味や旨味を感じるようになります。それらが濃厚な果実味と伸びやかな酸と一体となり、驚異的に複雑な味わいとボリューム感を生み出しているのです!
 

 これは、あの偉大なシャサーニュ・モンラッシェに比肩しうる傑出した白ワインです。
 
 

 ブルゴーニュの白の有名アペラシオン、ムルソー、ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェなどの近年の価格の高騰ぶりにはあきれるばかりですが、このサヴィニー・レ・ボーヌのクロ・デ・ゲットに関してはお買得というより、超バーゲンセールと言ったほうがいいのではないかと思います。
 
 

 参考価格:6,000円(税別)
 

美酒礼賛 第23回2018年12月15日(土)

 
Ca-del-Bosco-RS
 
 

 第23回はひさびさの泡物です。シャンパーニュに追いつけ追い越せと言わんばかりに品質の追求を続けているフランチャコルタを取り上げたいと思います。
 
 

 2002年フランチャコルタ・リゼルヴァ・ヴィンテージ・コレクション・ブリュットR.S.(カ・デル・ボスコ)
※2016年春にデゴルジュマン。
 生産地:イタリア,ロンバルディーア州フランチャコルタDOCG
 生産者:カ・デル・ボスコ社
 品 種:シャルドネ50%,ピノ・ネロ30%,ピノ・ビアンコ20%
 

 まずは、生産者のカ・デル・ボスコ社の説明から。
 1970年代後半より,フランス人醸造家を招き瓶内二次発酵(=シャンパーニュ製法)によるイタリア産スパークリング(=フランチャコルタ)の製造を開始。以後試行錯誤を重ね,いわゆる年号入りのヴィンテージ・コレクションやプレステージクラスのアンナマリア・クレメンティなどを次々に発表してきました。現在ではベッラヴィスタ社とともにフランチャコルタをけん引する優れたワイナリーになっています。
 さて,そんなカ・デル・ボスコ社が2018年に満を持してリリースしたのが,このブリュットR.S.です。R.S.とはRecentemente Sboccatotoha=最近デゴルジュマン(製品化)した,という意味です。シャンパーニュ好きならこの言葉を聞いてピンときた方も多いと思います。そうです。プレステージ・シャンパーニュ最高峰のひとつボランジェ社のR.D.です。2004年のR.D.は13年以上のセラー内熟成を経て2018年の春に市場に出荷されましたが,この2002年のR.S.は12年4ヶ月の熟成を経ています。このことよりカ・デル・ボスコ社のハンパない意欲を感じざるを得ません。
 

 では、早速抜栓してみましょう。
 ゴールドのきらめきが繊細な泡立ちとともにフルートグラスの中を駆け上がっていきます。マスカットやレモン,ピーチなどのフルーツのアロマにピスタチオやブリオッシュなどの香ばしさに加えハチミツのニュアンスも。味わいはデゴルジュマンしたての溌剌さと長期熟成による濃厚な熟成感とが相まって,ワンランク上のバランスを醸し出しています。
 まさにシャンパーニュを超えた傑出したフランチャコルタです。
 
 

 2004年のボランジェR.D.が38,000円でこのカ・デル・ボスコR.S.が15,000円。半分以下の価格で最上級のスパークリングワインが味わえるこの贅沢は何物にも代えがたいものがあります。
 
 

 みなさまも,ぜひ!
 
 

 参考価格:15,000円(税別)
 

美酒礼賛 第22回2018年3月14日(水)

 
capellanes-OLuardoSil
 
 

 第22回はスペインの独自品種ゴデージョです。
 大西洋に面したスペインの北西端にある白の銘醸地ガリシアからの1本です。
 
 

  2015 オ・ルアール・ド・シル ソブレ・リアス(パゴ・デ・ロス・カペジャーネス)
 生産地:スペイン,ガリシア州DOヴァルデオラス
 生産者:パゴ・デ・ロス・カペジャーネス
 品 種:ゴデージョ100%
 
 

 まずは、生産者のパゴ・デ・ロス・カペジャーネスの説明から。
 1996年にスペインの銘醸地リベラ・デル・ドゥエロの中心地で創業。パゴ・デ・ロス・カペジャーネスとは「司祭の畑」という意味です。中世の時代この地では、司祭たちがブドウの栽培とワインの醸造を行っていました。当主フランシスコ・ロデロは由緒あるこの地に100haもの土地を所有し、スペイン最良のワインを造るべく邁進しています。すでにテンプラニージョを使用した赤ワインでは世界的名声を勝ち得ています。
 

 そんなカペジャーネスですが、白ワインの生産にはたいへん慎重でした。2014年本拠地のリベラ・デル・ドゥエロから北西へ300kmも離れたガリシア州ヴァルデオラスに醸造所を新設し、ゴデージョの栽培と醸造を始めました。その最初の成果がこの「オ・ルアール・ド・シル」なのです。

 早速、抜栓してみましょう。グラスに注がれた液体は透明感のある淡いゴールドを呈し、スィーティーやグレープフルーツなどの柑橘系の香りを放ち、つづいて梅やりんごのジャム、そしてローズマリーやエストラゴンなどのハーブ系の香りも。一口含むと、ピリッとした酸味を感じ、次にボリューム感のある果実味、そしてフィニッシュには心地よい苦みがほんのり残ります。
 

 この白ワインは木樽熟成はなく、そのかわりタンク内で6か月間シュール・リー状態におかれます。今まで個人的にはゴデージョのワインでピンとくるものがなかったのですが、この「オ・ルアール・ド・シル」は違います。ブルゴーニュやロワールの白にはないキラキラ光る個性を持っているのです。
 
 

 なお「オ・ルアール・ド・シル」とは「シル川に反射する月の光」という意味だそうですが、その詩的な表現が完璧に的を得た傑出した1本となっています。
 

 ただ残念なことに、このワインは輸入元の判断で終売となりました。しばらく日本には入ってきそうにありません。当店のセラーにもあと数本のみ。(泣)
 
 

 参考価格:5,300円(税別)

美酒礼賛 第21回2017年12月30日(土)

 
Malberg-Hochrain-GV
 
 

 第21回はオーストリアの独自品種グリューナー・ヴェルトリーナです。
 オーストリア随一の銘醸地ヴァッハウからの1本です。
 
 

 2013 ホーホライン・グリューナ・ヴェルトリーナー(ファイダー=マルベルク)
 生産地:オーストリア,ニーダーエステライヒ州ヴァッハウ
 生産者:ファイダー=マルベルク
 品 種:グリューナー・ヴェルトリーナー100%
 

 まずは、生産者のファイダー=マルベルクの説明から。
 ナパ・ヴァレーを振り出しにトスカーナ、スイス、ドイツ、ニュージーランドなどで研鑽を積み、2008年独立。ヴァッハウに醸造所を設立。
 ヴァッハウでは不可能と言われていた有機農法を実践し、貴腐果を使用せず、硬質ではありますが、上品でエレガンスに満ちたワインを造り上げています。
 
 

 では、早速抜栓してみましょう。
 直後は、グレープフルーツなどの柑橘系のアロマが支配的。数分後にはマンゴーやピーチなどの熟した甘いフルーツの香りが徐々にわき上がってきます。一口含むと、キリッとした酸をまず感じるのですが、すぐにまろやかな果実の旨味を感じ、フルボディでしかも余韻も長くつづきます。
 

 温暖化の影響でしょうか。近年のヴァッハウのワインは、アルコール度数が高くオイリーで、ニューワールド産リースリングのような少しもたついた印象のものが多いように感じられます。そんな中でこのファイダー=マルベルクのワインは貴重で、かけがえのない個性を有しています。
 
 

 傑出したオーストリアの白です。
 
 

 参考価格:6,500円(税別)

美酒礼賛 第20回2017年11月25日(土)

 
KOBE-Benediction-Blanc
 
 

第20回は日本ワインの白です。第3回では城戸ワイナリーを、第9回ではボーペイサージュを取り上げました。今回は神戸ワイナリーです。
 
 

 ここで神戸ワイナリーの歴史をおさらいしておきましょう。1979年に「一般財団法人神戸みのりの公社」として設立され、ファーストヴィンテージは1983年。以来30年以上にわたって営々とワインを造り続けている、老舗の国産ワイナリーです。ただその道のりは決して平坦なものではありませんでした。2008年には300万本もの不良在庫を抱え、製造元の「神戸みのりの公社」に対し、スポンサーの神戸市がXX億円の追加出資を行って救済したこともありました。また阪神間のワインファンからは「コープ(生協)さんで大量に売っているあのイマイチなワインね」とあまり評判は良くありません。
 
 

 ところが、神戸ワインは変わりつつあるのです!
 
 

 その代表選手が今回取り上げる「ベネディクシオン・ブラン」なのです。
 

 2016 ベネディクシオン・ブラン(神戸ワイナリー)
 生産地:日本,兵庫県神戸市
 生産者:神戸ワイナリー
 品 種:シャルドネ100%
 
 

 このベネディクシオンのシリーズは、現在北海道函館市の「農楽蔵(のらくら)ワイナリー」で醸造を担当されている佐々木佳津子(ささき・かずこ)さんが2008年にフランス帰国後から神戸ワイナリーで着手された新プロジェクトです。2010年に赤と白を初リリースし、その2008年産ルージュは「2010年国産ワインコンクール」で銅賞を、2009年産ブランは「2010年ジャパン・ワイン・チャレンジ」で銅賞をそれぞれ獲得しました。佐々木さん自身は2012年には神戸ワイナリーを離れましたが、その後もベネディクシオンは粛々とと造られており、この2016年産のブランは「2017年ジャパン・ワイン・チャレンジ」で金賞を受賞しているのです。
 
 

 それではグラスに注いでみましょう。
 色は透明感のある淡い黄色。グレープフルーツ、洋ナシなどのアロマを感じ、つづいてミントのニュアンスも。口に含むと爽やかな柑橘系の味わいとともにほど良いコクもあり、フィニッシュには心地よい苦みが残ります。ちょっと若いですが、あと半年ほどの瓶熟成で木樽の風味が溶け込み、より美味しくなることでしょう。
 

 このベネディクシオンは傑出したシャルドネとは言えませんが、なかなかどうしてイケてます。同じ価格帯のブルゴーニュ・ブラン(たとえばジャド社など)と比較しても決して見劣りしません。

 
 

 ベネディクシオンとはフランス語で「天の恵み」という意味です。神戸市北区と西区にあるブドウ畑の「天の恵み」をこれから神戸ワイナリーはどう生かしていくのか。
 「神戸ワインの進化」が楽しみです。

 
 

 参考価格:2,667円(税別)